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Re: Silver × Cherry blossom ( No.2 )
日時: 2011/11/25 19:37
名前: 芽黒 ◆sSA6ZLKK6w (ID: Lq8/irU9)

第一章 +一話 手違い+

 あー、死んじゃったー・・・。
 手紙には「悔いはない」とか書いてきたけど・・・、やっぱ、もうちょっとだけ長生きしたかったなというのが本望だったり。
 でも大切なのは「長さじゃなくて質」・・・、だと思う。・・・としたら、俺は最高の人生を送れたってことになるのかな??まぁ、いじめとかそういうものもなかったし、そこそこ学校も楽しかったし、いっか。
 ところで、ここはどこ? 
 あたりはあと少しで夜本番という暗さで、太陽は真っ赤なほどに空を照らしている。比喩ではない。本当に真っ赤なのだ。
 手紙に書いた「空」は、スカイブルーの澄み切った空ではなく、真っ赤な鮮血のような空だった。
「あれ、新入り??」
背後から突然声を掛けられアーロンは驚く。そして、ぎこちなく振り向く。振り向いた先には、グレーの長髪を1つに束ねたすらっとした男性がいた。歳は20半ばくらいかな、と思いながらアーロンは聞く。 
「え、あ、あの・・・俺、ここが何所だか分からないんですが???」
、と。男性はさっきと変わらない表情でアーロンの質問に返す。
「う—・・・ん。そうだな、簡単に言えばここは哀れな者の世界・・・かな」
男性のほうは簡単に言ったらしいが、アーロンには理解できなかった。
「わけがわからない、という顔をしているな」
うっすらと笑い、男性は続ける。
「ここは哀れな者の世界・・・。哀れなものとは地上に悔いを残してきたヤツのことを指す。」
アーロンはぽかんと口を開けて、頭の中にモヤモヤしたものが生まれるのを感じた。
 俺、別に地上に悔いなんか残してきてないんだけど・・・、と。
「それで、そーいうヤツは死神となる。・・・でも勘違いするな、死神は神ではない。もっとも下級で最悪な死者の事だ。神のように偉くはない。だが、俺も死神なんだけどな」
男性は笑う。その笑いは「薄笑い」というわけでも「苦笑」というわけでもなんでもなくただ単に「純粋な笑い」だった。
「え、でも。俺、悔いなんて——・・・」
「悔いがあるからここ(哀れな者の世界)に来たんじゃないのか??」
アーロンが言おうとした言葉は男性に遮られた。でも、本当に俺は悔いがないんです!と叫んでやりたいところだったが、今はそれを実行しても無駄だ、と悟りアーロンは黙った。
「でも—・・・、こんなに若くしてしんだんだもんなぁ。そりゃ悔いも残っちまうってなぁ。理由は?病気か?それとも——・・・」
「いや、轢かれました。トラックに」
男性が言い終わる前にアーロンは答えた。このまま言わせておくととんでもない死に方にされてしまうだろうと思って。トラックに轢かれただけでも十分とんでもない死に方だったが。
「あちゃー!!兄ちゃん残念だねぇ!」
空気を読んでいるのか読んでいないのか、全くわからない男だった。
「兄ちゃ・・・・・・、っと。その前に名前をお尋ねしても?」
男性は顔を近づける。よく見ると男性はかなりの美形だった。
「アーロン・マクダーモットです。」
アーロンは微笑んだ。
「アーロンか!俺はカール=ハインツ・ダフネルだ。カールでもルーハでもよんでくれ」
カールは白い歯を見せ、笑った。「よし!ではアーロン。お前を面談所に連れてくか!」
「はい?え、面談所ってな——」
「面談所は面談所だろ!いくぞ!」
カールはアーロンをがっしりと抱えると“空を、飛んだ”。