PR
ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 小人ノ物語【第一章更新!!】 ( No.11 )
- 日時: 2011/12/15 21:02
- 名前: 萌恵 ◆jAeEDo44vU (ID: amGdOjWy)
第一章 「小人になる薬」の配達屋さん【第三部】
壁紙は、黒地に金色の小さな星柄。ダークブラウンのフローリングの上に敷かれた絨毯は、白色のタフテッド・カーペットだ。勉強机や本棚も、黒や白等の落ち着いた色で統一されている。とても、十二歳の少女の部屋だとは思えない。
「早く座りなよ、夕菜」
扉を後ろ手で閉め、しばらくこの部屋を見回していた夕菜に、星が声をかける。夕菜は「アハハ、ごめーん」と笑顔で言うと、まだお菓子を頬張っている星の近くに座った。星は今、熱々の湯気を立てているミルクティーが入ったティーカップを、両手で包み込むようにして持っている。まだ、冷まし終わっていないのだろう。
「私もお菓子食べたーい。……あ、今回はミルクティーとマカロンなんだー。じゃ、早速いただきまーす」
夕菜が、嬉々とした表情で、皿に盛った色とりどりのマカロンに手を伸ばす。その様子を見て、星は不思議そうに首を傾げた。
「夕菜ってマカロン、食べれるんだっけ?」
「全然食べれるよ。どうして?」
星が手を付けようともしなかった黄色のマカロンを咀嚼しながら、夕菜が聞き返してくる。星は少し困ったように「ううん、何でもないよ」と言って、桃色のマカロンを口に含んだ。
——ピンポーン
夕菜が二個目のマカロンを咀嚼している時に、その音は、この家に客が来たことを報せてきた。二階にまで、星の母親の声が届いてくる。二人は、扉にぴったりとくっ付いて、耳をそばだてた。
「はい、どちら様……あらぁ、良哉君じゃない! 星に何か用かしら?」
「暇なので、今、遊べるかなぁと思って」
この家にやってきた客人——相田良哉は、男の子にしては少し高い声で、来訪の理由を告げた。
PR