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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 小人ノ物語【第一章更新!!】 ( No.20 )
- 日時: 2011/12/23 19:39
- 名前: 萌恵 ◆jAeEDo44vU (ID: amGdOjWy)
第一章 「小人になる薬」の配達屋さん【第六部】
名も無き世界、別名『ファンタスティック・ワールド』には、人間界で『幻の生物』とされる生き物が数多く息づいている。特に妖精や小人は、名も無き世界に、数え切れない程生息していた。それらの生き物の能力は遥か無限大にまで広がり、洗練され、ついには長い年月をかけて『能力者』なるものまで誕生した。
特別な能力者だけにしか扱えない能力は、たった一つだけ。それは、人間界と名も無き世界の狭間に存在する、『世界の壁』に穴を開ける事。もっと簡潔に言ってしまえば、名も無き世界から、人間界へ行けるようにする事であった。
そもそも『世界の壁』には時々、穴の開けやすい脆い場所が出現するようになっていて、能力者は、その脆い所を探し出し、破壊する能力を持っていた。
——ジュリアは、その特別な能力を持った能力者だった。
「『世界の壁』の役割は、人間界と私達の世界の衝突を防ぎ、双方の平穏を保つ事よ。その『世界の壁』を破壊したら、凄まじい代償が返ってくるでしょうね。まあ、たとえ能力者でも、『世界の壁』全部を破壊することは絶対に不可能だと思うけど」
不安に顔を歪めた妹を慰めるように、ジュリアが言った。瞬間、ソフィアが安堵の溜息をつく。口からは息の代わりに、透明な泡がブクブクと漏れ出る。
「あ、見えてきたわよ——『世界の壁』の歪みが!」
二人の妖精の目に映ったのは、周りの海水や砂や海藻全部をぐちゃぐちゃに混ぜた様な、異様な光景だった。
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