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Re: 小人ノ物語【第二章連載中です!】 ( No.29 )
日時: 2012/01/06 18:08
名前: 萌恵 ◆jAeEDo44vU (ID: amGdOjWy)

第二章 幼い頃の夢は叶ったけど【第三部】

「私の名前は、ジュリア。ジュリア・リリよ」
「私の名前は、ソフィアです。ソフィア・フィフィです」

 ソファに座り、薄い橙色の、何処か頼りない灯りに照らされながら、ジュリアとソフィアは自らの名を名乗った。
 二人の目の前には、真っ白な四足テーブルと、熱々の湯気をたてる、琥珀色の紅茶が入ったティーカップが二つ。その向かいには、同じような装飾が施されたティーカップが、三つ並んでいる。ソフィアがティーカップの持ち手に手を掛けながら、
「ところで、この飲み物は何ですか?」
 ティーカップを両手で包むように持ち、紅茶をふぅふぅ覚ましていた夕菜に聞く。その隣には、同じように紅茶を覚ましている良哉がいる。夕菜は紅茶を覚ますのを止めて、顔に微笑を浮かべながらソフィアの質問に答える。
「紅茶よ。ストレートティー、って種類……かな?」
「なるほどです」
 ソフィアはこくんと頷くと、ティーカップに唇を近づけ、恐る恐る口の中に紅茶を含んだ。おもむろに飲み込み、しばらく口の中に残る後味を確かめる。ソフィア以外の四人が、どう? と聞くように、ソフィアの顔を覗き込む。
「……いです」
「え? なんて言ったの?」
 両手でティーカップを持ったまま、ソフィアが、最後の一字しか聞こえない程の声で呟く。全員が一斉に首を傾げる。姉のジュリアは、まだ、紅茶どころかそのカップにさえ触れようとしない。それを見て、ソフィアは、突然吹っ切れたように大声で言い直した。
「美味しい、です!」
 刹那、その大声にびっくりした星が、後ろへ引っ繰り返りそうになる。美味しそうに紅茶を啜っていた二人が、ほぼ同時にカップから琥珀色の液体を零す。
 丁度その時、五人の頭上から星の母——瑠奈さんの声が降ってきた。