PR
ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 小人ノ物語【物語の謎が、一部明かされました!】 ( No.36 )
- 日時: 2012/01/14 21:25
- 名前: 萌恵 ◆jAeEDo44vU (ID: amGdOjWy)
第二章 幼い頃の夢は叶ったけど【第五部】
夜もまだ浅い、二〇時二三分頃——。
深い闇は、一方的にその濃さを増していくばかり。
こんな時間に、現役バリバリの小学六年生が、ぐっすりと眠れる筈がない。当然、星たち五人はまだ起きていた。
「嗚呼、眠れないなぁ……」
温かいとも冷たいともいえない床に寝転がり、しばらく仰向けでじっとしていた星。モスグリーンの広いソファに横たわり、魂の抜かれた死体のように四肢をだらんとさせていた夕菜。ティーカップやクッキーの皿等が片付けられたテーブルの上で、独り、倒れこむようにしていた良哉。ダイニングテーブルの傍らで、ひっそりと声を発さず椅子に座っていたジュリアとソフィア。
その時間はまるで永遠さながらに、豪奢な可愛らしいドールハウスの中をぐるぐると駆け巡っていた。
いつの間にか“四人”は、暗い海のように深い眠りの世界に堕ちて、すぅすぅと密かな寝息までたてていた。たった一人の、眠れぬ人間の子を残して。
翌朝、七時頃。
深い眠りから覚め、瑠奈さんを含む六人は、星の部屋の中央辺りに集っていた。
「皆、準備は良い?」
まだふさふさの赤毛を結っていないジュリアが、瑠奈さん以外の四人に向けて、強張った顔で問う。問われた四人が、おもむろに頷く。その顔にはどれも、不安や恐怖といった感情が浮かんでいる。
今まで黙っていた瑠奈さんが、唐突に口を開く。
「早く……行って頂戴。もう、耐えられないわ」
「お母さん……」
別れ際、美月親子が交わした言葉は、たったのそれだけだった。
——世界の壁に、再び穴が開けられる。
これまでになかった、凄まじい衝撃。身体が張り裂けて、肉に塗れた骨まで見えてしまいそうな——。
星は叫んだ。
「死ぬ——ッ!」
PR