ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 小人ノ物語【プロローグ更新!!】 ( No.5 )
日時: 2011/12/15 21:00
名前: 萌恵 ◆jAeEDo44vU (ID: amGdOjWy)

第一章 「小人になる薬」の配達屋さん【第一部】

 ——嗚呼、日本の冬は、なんて寒いのだろう。
 道路沿いの道を歩きながら、十二歳の少女、美月星は嘆いた。ここは××県桐ケ谷市、赤根町の片隅。緑区や西町等の、都市部に近い町とは程遠い、技術的な遅れが垣間見える、かなり古い歴史を持つ町だ。そんな赤根町の冬は……寒い。特に朝となると、吐く息が煙のように白くなり、まるで自分が蒸気機関車になったかのような気分になる。しかし、空からは白い、ふわふわした冬の風物詩達は降ってこない。
星は、今まで溜めてきたものを吐く様に、溜息をついた。

「どしたん、日生ちゃん。元気がないぞよ」
星の隣で足早に歩いている親友——西川夕菜が、星の顔を覗き込んでくる。星はふんと機嫌が悪そうに鼻を鳴らすと、
「別に。何でこんな雨が降ってるのに、雪が降らないんだろうって思ってただけよ」
刺々しく呟いた。

 星は、普通の友達程度の人間には、そんな言葉を返さないようにしている。しかし、小学一年生からの親友には、気兼ねなく物を言う事が出来るので、星は内心夕菜に感謝していた。夕菜もそれが分かっているので「ふーん」と嬉しそうに言ったきり、黙り込んでしまった。

 ザアザアと耳障りな音を立てて、冷たい雨が容赦なく降ってくる。昨日も雨が降っていたが、今日のは更に酷くなっていたようで、二人の靴下は隅々まで濡れていた。しかし、二人には強力な味方がいた。——星の家だ。
「早く日生ちゃんの家に入りたい〜」
夕菜が駄々をこねてくる。星はそれに答えず、自宅の門を開けて、さっさと玄関の扉を開けてしまった。そのまま家の中に入ろうとして足を止め、夕菜の方に顔を向ける。
「先、入ってるから」
「ええッ」
星の姿が家の中に消えると同時に、夕菜も慌てて門を潜り、玄関の扉を開けて、家の中に入って行った。