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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 小人ノ物語【第一章更新!!】 ( No.7 )
- 日時: 2012/01/13 20:51
- 名前: 萌恵 ◆jAeEDo44vU (ID: amGdOjWy)
第一章 「小人になる薬」の配達屋さん【第二部】
広くて、伸び伸びと動ける玄関は——綺麗に整えられている。二階へと続く螺旋階段も——塵一つ無い。壁は信じられないくらいに純白の白さを保っていて、先程通った廊下も、眩しいくらいに輝いている。相変わらず美月家の家は綺麗だ、と夕菜は思わず溜息をついた。さすが、準潔癖症の人間——星の母親の事だ——が住む家だ。
螺旋階段をのぼりながら、夕菜はもう一度溜息をついた。星はもう、二階の広い自室で待機しているに違いない。恐らく、お盆に乗った熱々の紅茶と、甘いお菓子を食べながら。……今日のお菓子は何だろうか。前に来た時は、確か手作りのキャラメルプディングだった様な気がする。夕菜は、頭の中に浮かび出る、甘い想像に翻弄されそうになった。
階段をのぼり終え、短い廊下を進むと、星の部屋の扉が見えてくる。ミルクティーの様な、淡い茶色の扉の目の前に立ち、金色の取っ手を握って回す。妙な緊張感が夕菜を包み込む。
「お邪魔しまーす……」
この家に入って二回目の言葉と共に、星の部屋の全貌が徐々に、徐々に明らかになっていく。
「どうぞ」
少し遅れて、星の声が返ってくる。口に何かを含んでいる時の、あの、モゴモゴした感じの声だ。夕菜は、敢えてゆっくりと、星の部屋に足を踏み入れた。
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