ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Every day the Killers ( No.2 )
- 日時: 2011/12/31 13:44
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
……
「やっぱり殺しの依頼かー…」
今度は凛とした声ではなく、怠け者のような声を出す巡。
ある大富豪というのは、最近勢力を伸ばしつつある"金銭 鎮"という男だ。
鎮は、とても欲が強い男で、周りの住民から金を根こそぎ奪っているのだという。
おそらく先刻の電話の相手はその住民の一人だろう。
「その金銭って奴も、よくやるよなー。」
頭をポリポリとかきながら、一人呟く。
「確かソイツがいる町は……」
そう言いながら机をあさり、地図を取り出す。
彼の部屋はいたってシンプルであり、何処か殺風景なところもある。
「遠いな…バス代持っていこ。」
またもや机の中から財布を取り出し、千円札があるのを確認する。
「これだけあれば足りるだろ。」
その光景は、まるで一人で遠くに友達と出かける準備をしているそのものだった。
———まあ彼には"友達"というものはいないのだが。
「よし、じゃあ寝よう。」
———ここで突っ込む人もいると思う。
"殺し屋"とは普通、夜などの人が少ないうちに標的をしとめる、というものなのだが、
巡はそれをしようとせず、人が多い昼にしようとしているのだ。
果たして、巡の計画は上手くいくのであろうか———
……
翌朝、昨日準備をしたバス代を持って近くのバス停でバスを待つ巡の姿があった。
その横には、眼鏡をかけた2つ結びの小柄な少女が同じようにバス停でバスを待っていた。
「………あの……」
少しの沈黙の間、隣の少女が巡に話しかけてきた。
「ん?何の用かな。」
巡も彼女に話しかける。
ふと制服に目を向けると、少女は見覚えのある制服を着ていた。
「……アンタ、もしかして神專高等学校の生徒?」
「え、あ、はい!」
"神專高等学校"とは、巡が通う学校であり、偏差値が一番高いいわば"天才が集う高校"なのだ。
「もしかして…巡啓一さんですか?」
「ん?そうだけど…何で知ってんの?」
見た感じ、彼女は自分より年下であることは分かるのだが、何年生というのまでは分からない。
「何でって…同じ学年なんですけど…」
———やってしまった。クラスメイトの名前を忘れるなんて。
「…もしかして、忘れてました?」
「…………悪ぃ…」
とても落ち込みを見せる巡に対し、少女神埼 美優は明るい表情を見せ、
「いいですよ!また覚えてもらえばいいことですし!!」
と、とてもというほどポジティブなことを言った。
「…………お前、ポジティブだな。」
「よく言われます。」
こうして、二人はバスが来るまで他愛も無い会話を続けていたのであった———