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Re: Every day the Killers ( No.21 )
日時: 2011/12/31 13:57
名前: 鈴音 (ID: MDpJUEHb)

                   ……

「僕の目的?キミには関係ないね。」

子供を嘲笑うかのように上からものを言う和弥。

巡には、怒りを抑えることしか出来なかった。

「……そうだ!僕の"本当"の姿、見せてあげよか?」

"本当"という言葉に巡は反応する。

———どういうことだ?あの姿は、"本当"の姿ではない———?じゃあ
一体アイツの正体は何なんだ……?

巡の頭の中は、和弥の一言で混乱してしまった。

「僕がこの指を鳴らすとね、姿が変わるんだよ♪」

楽しそうに顔の横まで右手を持ってくる和弥。巡に本当の姿を見せたく
てうずうずしているようだ。

巡は、和弥の"本当"の姿が一体何なのか、とても苦戦しているようだ。

「いくよ—————————」

パチンッ、という指の音が響き渡り、瞬間和弥の周りに黒い霧が発生した。

彼の服が変わり、背丈も巡より大きくなっていた。

見た目は———20歳前後の男性。

「どう?これが僕の"本当"の姿。」

何処かで聞いたことのある声。巡に依頼してきた男性———金銭の館から出てきた黒髪の少年の声だ。

「!…………」

巡には、驚くこと以外出来なかった。当然だろう。

目の前で、自分と同じ歳の少年が指を鳴らしただけで背丈、年齢、声、服装が変わってしまうのだから。

「ちなみに金銭和弥って言うのは偽名ね。」

そして金銭和弥という名前が"偽名"———巡はふと思った。

「金銭ではない…………?なら何故お前は金銭の館に居た!?何故偽名を———お前は一体何者だ!」

一気に沢山の質問を聞く。相当パニックになっているようだ。

「まあまあ落ち着きなよ。」

巡を宥める和弥(?)。どうやら彼は巡の質問に一つ一つ答えるつもりらしい。

「まず…僕が館に居た理由だね。それは簡単だよ、僕が金銭和弥に"成りすまし"ていたんだから。」

「成り……すまし?…ってことは金銭和弥という人間は居た…のか?」

「そうだね。まあ正しくは存在した、かな。彼、僕が殺しちゃったし。」

「殺した…っ!?………じゃあ死体は何処に…」

「何処だったかな…あぁ、金銭宅の地下室にでも置いてあるよ。」

——既にその死体は、白骨化しているであろう。しかし、巡の中に新たに疑問が浮かび上がる。

「…何故金銭…あるいはメイドたちはその異臭に気付かない…?」

普通、死体が腐敗してきたら異臭がする。地下室といってもそこまで深くないだろう、必ず異臭が1階まで届くはずだ。しかし金銭達は全く気付いていない。

「さあね、皆鼻が悪いんじゃないの?じゃあ次の質問ね。あぁ、これは先に自己紹介しとかないとね。」

———アイツの…本当の名前は一体…何故金銭の館に…アイツは何者なんだ…

やはりまだ考えているのか、巡はフルで頭を動かしている。

「じゃあ改めて…僕は金銭和弥。———もとい"悪谷 式也"、よろしくね♪」

「悪谷…式也…」

「で、僕が何者かって話だよね。」

「…………あぁ。」

「My identity is the devil.」

和弥…もとい式也が謎の言葉を放つ。

瞬間、目の前が真っ白になった。

真っ白といっても、何も思い出せないときになる事ではなく———本当に目の前が白いのだ。

巡はあまりの眩しさに思わず目を瞑ってしまう。

「—————」

式也が何か言っているが、何故だか音が聞こえない。

きっとその光は人間の五感を奪ってしまうのだろう。

巡は今でも目を開けられない。

数秒後———巡の皮膚に"風"があたった。

———おかしい、不自然だ。何故俺は体育館に居たのに、俺の身体に
は"風"があたっている…?

まさか…何処かに————飛ばされた?いや…そんな筈は…

恐る恐る、目を開ける巡。どうやらもう白い光は無いようだ。

ふと、空を見上げると————月が、血のように紅く染まっていた。