ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.29 )
- 日時: 2011/12/31 13:39
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
……
「何だよ、俺のこと威嚇してるぜ。」
さっきまでの怯えは何処へ消えたのか、ウォーカーのように笑みをこぼす巡。
『…………怖く、ないのか?』
「ん?あぁ、さっきまで怖かったけどな。」
"さっきまで"という言葉に引っかかりを覚えたウォーカーは、再び巡に聞く。
『………さっきまで?』
「あぁ。お前の戦い方を見てたら安心したからな。」
巡啓一と言う人間は、自分が戦うときは自信が無いが、他の人が戦っているのを見ると、安心感が湧き自信が持てるのだ。
「だから…こんな野生動物は一撃だぜっ!」
真正面からライオンに向かって走り、フェイントをかけ鳩尾に蹴りを入れる。が、親ライオンは直ぐ巡の方を向き突進してくる。
流石の巡も、正面から真っ向に受けるのは厳しいと思ったのか、左の草むらへ身を隠す。
しかし相手は百獣の王…すぐさま巡の居場所を見つけ出し、得意の爪の一閃で彼を襲う。
草むらから出てきた巡は、少し攻撃を食らったのか頬から血が流れていた。
『っ、やっぱり代わるよ…!』
それを見かねたウォーカーは、巡に言う。が、巡は聞かない。
再び真正面から突っ込む巡を待ちうけていたのか、すぐさまライオンの一閃が巡を直撃した。
『!』
思わず目を瞑ってしまうウォーカーだったが、うっすらと目を開けると巡がライオンの腹の下にいるのが分かった。
攻撃を食らう前に、ライオンの下へ滑り込んだのである。
直撃はかわしたものの、やはり怪我をした巡の制服には血痕が飛び散っている。
横蹴りをいれ、ライオンを吹き飛ばそうと脚を出した瞬間、巡の身体が横へ吹き飛んだ。
巡が腹の下にいたのに気付いたライオンが、前足で巡を横へなぎ払ったのである。
そのまま岩に頭を強打し、ついに動かなくなってしまった巡の頭からは、大量の血が流れていた。
ウォーカーが巡を見ながら固まっていると、ライオンはウォーカーを睨みつける。
『今度は…こっちに来る気か…………』
ウォーカーが戦闘態勢になって殺気を出した。それに伴いライオンも威嚇し始める。
が、ライオンの頭めがけて、岩が直撃した。
方向は————真横。
そう、巡が倒れていた方向である。しかしそこには倒れている巡の姿は無く———
立っているのも精一杯な様子で立っている巡の姿があった。
『啓一!』
ウォーカーは、初めて巡の名前を呼ぶ。
「う、ウォーカー…俺の名前、初めて呼んだな…。」
『今はそれどころじゃないよ!』
今まであまり表情を変えなかったウォーカーが、焦りの表情を見せる。
当然だろう。今の巡は、頭から大量の血を流し、横腹にはライオンになぎ払われたときの爪の痕がついており、そこからも血が出ている。このままでは彼は大量出血で死んでしまうだろう。
「何だよ、そんな心配そうな目してよ……大丈夫だって。」
血の臭いに反応したのか、ライオンは再び巡の方を向きなおす。
どうやら先に巡を片付けるようだ。
「お、やっぱりコイツは俺を先に殺したいらしいな。」
『やめなよ!!本当に殺されちゃうよ!』
目を見開き、精一杯の声で巡に忠告をするウォーカーだが、巡はやはり聞き入れない。
大きめにライオンにもテレパシーを送れば、ライオンもこちらを標的にすると思ったが、ライオンでさえウォーカーに興味を持たない。
巡は完全にライオンの標的になってしまったようだ。