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Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.32 )
日時: 2012/01/04 15:24
名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)

                   ……

ライオンが巡を標的にしてから数分———

両者とも、微動だにせず相手の出方を待っている。

『長期戦にする気か……………?』

「そう見たいだな。」

ライオンから視線をはずさないように、ウォーカーの問いに答える。

『長期戦って…勝てるの………!?』

今の巡には、立っているのもやっとのことだろう。このまま長期戦に持ち込んだら、間違いなく先に倒れるのは巡の方に違いない。

「勝てるに決まってるだろ。コイツの倒し方は既に分かったからな。」

ニッ、と笑う巡。

『倒し方が分かったって…!』

「伊達に攻撃を喰らい続けたわけじゃねーしな。」

身体を張ってまでして相手の倒し方を見つけるとは、流石といいたいところだがそんなことを何度もしていたら身体が持たないだろう。

『それで…倒し方って…?』

「簡単だ。………………蹴り倒す。」

『えぇ!?』

"蹴り倒す"という単純な攻撃方法に、ウォーカーはつい変な声(?)を出してしまう。

「今まで受けた攻撃の……2倍にして返してやるからな!」

まるでチンピラのような言い方をする巡。………ライオンという野獣を敵に回して部下たちに自分の強さを見せつけようとする馬鹿なヤクザのボスのようだ。

『……………………』

ベタな台詞を吐く巡を、苦笑いをしながら見つめるウォーカー。

しかし、巡は立っているのもやっとだったはずなのに、怪我をする前と同じ速度……いやそれ以上のスピードでライオンの横まで行き、鳩尾に蹴りをお見舞いする。

猛スピードで走り、勢いがついた蹴りは、これまでとは比べ物にならない威力を持っていたらしくライオンは樹木にあたり、木が倒れてくるほどである。

『……………………』

今度のウォーカーの沈黙は、苦笑ではなく驚きを隠せないものである。

怪我をしているのにもかかわらず、怪我をする前以上の威力がある蹴りをお見舞いするほどである。

『……………啓一。』

まだ驚いているのか、目を見開いたまま巡にテレパシーを飛ばす。

「何だ、ウォーカー。ほら、俺が言ったとおり蹴り倒せば勝てるんだって!」

——目の前の男…巡啓一は只ならぬ人種だ。

ウォーカーの本能が、そう告げる。

『!啓一後ろ!』

相手も負けず嫌いなのか、よろよろになりながらも巡を威嚇する。

「何だ、まだやるのか?」

黒い笑みをライオンに向かって放ったところ、ライオンはビクッと一瞬怯えた。その瞬間を、巡は見逃さずにライオンに向かって走っていき仔ライオンの方へ蹴り飛ばす。

仔ライオンにはあたらなかったが、親ライオンは仔ライオンをかすめ、その後ろの樹木にあたって気絶をしていた。

「まあ、こんなものかな。よし、先に進むぞ、ウォーカー。」

『え…………あ、うん。』

まさか本当にライオンを蹴り倒すとは思っていなかったウォーカー。少し返答が遅れる。



                    ……

『………………あそこには、悪い噂が沢山あるんだ。』

ダークサイド校が近くなって来た頃、ウォーカーは急に話す。

「どうしたんだよウォーカー。急に………」

『あそこ……ダークサイド校は、入学生は沢山いるんだけど…………卒業生が一人も居ないんだ。』

「はぁ?卒業生いないのかよ……。まあでも俺は気にしないから、そんなこと言っても無駄だぜ?」

しかし、ウォーカーの言ったことを気にしないという言葉で切り捨てる巡に、少し心配そうな眼差しを向けるウォーカー。

「……………何だよ、さっきから見て…落ち着かねーよ……。」

その視線に耐えかねたのか、巡はウォーカーの方を向いて言う。

『あ、ゴメン。』

ハッとしたのか謝り前を向くウォーカー。


————— 一体、ダークサイド校というのはどんなものなのか。

巡は只、そこに向かって進んで行くだけだった。