ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.38 )
- 日時: 2012/01/15 14:07
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
……
「っこの!!」
蝙蝠の群れを、自前のナイフで追い払おうとする巡。彼らの身体は切り傷でいっぱいだった。
この洞窟の蝙蝠は特殊らしく、羽がとてつもなく鋭利だ。故に、体当たりをすれば標的に自動的に切り傷が付く。
一匹の攻撃ならまだしも、群れ———大群である。巡達へのダメージはとてつもないだろう。
しかし、見てみると重傷なのは巡のみ。ウォーカーと美優は軽傷ですんでいる。このことが意味することは只一つ。巡が二人を守ったのである。
「け、啓一君!」
傷が浅い美優は、まだ叫ぶぐらいの余裕はある。巡の名前を呼ぶ。巡は振り返らない。否、振り返れないのだ。
今、巡が後ろを振り向いてしまうと、巡に隙が出来てしまい、蝙蝠の斬撃が二人を襲ってしまうと考えたのだろう。ウォーカーはそのことを分かっていたらしく、美優にそのことを言う。
理由が分かった美優は、巡の背中に両手をかざす。
「美優?一体何するつもりだ。」
背後の気配が分かるのか、巡は後ろに居る美優に問いかける。美優は「気にしないで。」と言い、その後何度問いかけても無視している。
否———無視ではなく、集中していたのだ。巡の傷を治すために。
美優が集中し始めた数秒後、彼女の両手に白い光…そう、巡のわき腹の傷を治した光が溢れ出てきた。
その光が丁度目くらましになったのか、蝙蝠たちの動きが少し鈍る。巡は、それを見逃さず、一気にかたをつけた。
「よし、こっちは片付いたぞ。」
ウォーカー達の方を向く。いつの間にか、皆の傷は消えていた。——それも、美優のお陰なのだが。
ウォーカーは俯いていた。巡は理由を聞く。返ってきた答えは———
『…だって、役に立てなかったから。』
「……………それだけかよ!」
巡は汗をかきながらウォーカーに突っ込む。どうやら彼は役に立ちたかったらしい。
ウォーカーの横で美優が苦笑いをしているのが伺える。
……
「結構奥まで来たよなぁ。」
巡達は洞窟内の奥へと進んでいる———のだが、景色が一変しないので、実感があまり湧かない。
「ま、まさか迷子になったりとか…しないよね?」
美優がおどおどしく話かけてくる。ウォーカーはそれを否定するが、言葉の最後に小さく"多分"と言ったのを2人は聞き逃さなかった。
ウォーカーの"多分"という言葉に、余計不安になったのか、二人は少し顔が青ざめていた。
しかしウォーカーは振り返りもせず只一人黙々と先へ進んで行った。
急に、ウォーカーが立ち止まる。巡達もそれに合わせて止まる。何故ウォーカーが止まったのか理由が分からなく、巡はウォーカーの先を見る。そこには、大きな人影が。
その人影は身長180cm以上はあるであろう。大きい。それは巡達の存在に気付いたのか、こちらにゆっくりと、歩み寄ってくる。
「…………誰だ、お前ら?」
その大きな人影は、頭を掻きながら面倒くさそうにそういった。ウォーカーはその人影の服の胸のあたりについているバッジを見てこういった。
『コイツ……クリスタクト…!』
ウォーカーの口から出るクリスタクトという単語に、二人は思い切り目を見開く。