ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.67 )
- 日時: 2012/06/02 19:48
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
……
「!」
背後から急に声がしたため、勢いよく地面を蹴り後ろへ飛ぶ。巡の後ろにあるのはカジュネス邸の扉で、ぎりぎり彼はその扉に触れなかった。
巡の影はちゃんとある。だが、先ほど居た場所の影はまだある。あの影は自分の影では無い。ならば一体誰の影なのか。
先ほど、ルナヴィンが「これがカジュネス様だよ。」と言っていた。ならば、この影がカジュネスだと言うのか。背後から声がした。
「どうした少年、後ろががら空きだぞ?」
「!!?」
背後を振り向いても誰もいない。前の影…否、カジュネスが移動したのかと思い目を向けるが未だにカジュネスはそこにある。美優にカジュネスが動いているか聞いたが、特に変わった様子も無かったと答えた。
両方向から来る謎の声。声質は違うもののどこか似ている雰囲気をかもし出している。同一人物が声質を変えて話しているのかそれとも……。
———もしかして、カジュネスは1人ではなく2人………!?
どっと、じめっとした汗が流れ始める。冷や汗と脂汗が混ざった不思議な感じがした。もし相手が1人ではなく2人だとしたら危険だ。片方の姿は確認出来たものの、もう片方の方は未だ確認が出来ない。声がするだけで姿が見えないのだ。
———どうする……?もしもう片方の方に襲われたりでもしたら………。
第一、訪問客をいきなり襲うと言う事はしないと思うが、此処は巡がいた世界とはだいぶ違う。よってこちらで常識と思っていてもリムーヴァルクでは通じるか分からない。こっちの世界で非常識なのがリムーヴァルクでは常識なのかもしれない。
「どうした?動きが止まっているぞ?」
声は巡の周りから聞こえた。どうやらもう片方は巡の周りを回っているようだ。そうは思っていてもやはり姿はない。下を確認するが影すらない。
「啓一君!影!動いたよ!」
急に美優の声。その美優が言う影の方を見ると、巡の影の前まで来ると静かに巡の影の髪を触る。すると彼の髪が持たれたように上に上がる。そして影が巡の影の髪から手を離すと、巡の髪も静かに落ちる。
影と身体の連動。
とっさに巡は危険を感じた。
もし、この影のカジュネスが自分の影に対して攻撃を仕掛けてきたらどうなるか。片方の目に見えない方の攻撃を防いだとしても、影に攻撃をされたら自分にダメージが来る。
———くそっ……。
半分諦め気味で集中力を弱めたそのときだ。ふいに耳元で声がした。
「そう直ぐ諦めるな少年。」
そういった瞬間、2人の人影が巡と美優・ルナヴィンの間に現れた。身長は美優と同じか、少し高め。
白い服を着こなす2人は巡とルナヴィン、そして美優を一度見渡してから静かに微笑み、
「ようこそ、我が邸宅へ。」
2人一緒に、爽やかな笑顔でそう言った。