ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.71 )
- 日時: 2012/06/09 20:04
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
……
数十分間、カジュネス邸に居座った巡達。カジュネス姉妹とロンリーと仲良く出来た一行は、ウィルディンにまつわる不思議な話を聞く事になった。
それは、今まで伝わってきた伝説…いや、言い伝えと言ってもいいだろうか。此処、ウィルディンには毎年若い男性、または女性が"ウィルディンの湖"に行くと次の日から湖に訪れた男性または女性が行方不明になる、と言うもの。こちらの世界で言う"神隠し"のようなものだ。
しかしこちらの"神隠し"はいつかは行方不明になった人が帰ってくるが、リムーヴァルクの神隠し、"家臣隠し"は行方不明になった人たちは一行に帰ってこない。それに加え年々行方不明者が増加しているという始末だ。
巡は最初は信じていなかったが、昨年この邸宅に勤めていた家臣が1人ウィルディンの湖に行って翌日行方不明になったと言う。行方不明になった家臣は若く見た目は10〜20代だったそうだ。
3人は沈黙を作る。作ると言うよりは出来てしまった、の方があっていると思うが巡は意図的に沈黙を作っていた。それは、
———この"家臣隠し"……。何故行方不明になった人々が帰って来ないのか。自分たちの意思で帰って来ないのか、それとも、既に……。
死んでいるのでは、と最悪の事態を脳裏に焼け付けながらも、相手の出方を待つ。しかし姉妹は2人とも口を硬く噤んだまま話そうとしない。機密事項なのか、単に言いたくないだけなのか。
「そーんな暗い話しないでっさー、明るく皆で猫☆ネコダンスしようよぉー!」
そんな暗い空間を破ったのは、黒い猫耳を頭から生やした猫…いや、化け猫だった。彼女は両の拳を軽く握り、顔の下あたりまで持ってくると不意に腰を振りはじめ、
「にゃにゃにゃー、猫はこったつでまるっくなるーくるっと回って一回転!にゃ!」
謎な踊りをし始めた。また変な奴が、と巡はため息をつき、美優は化け猫の腰の動きを目で必死に追いかけている。ウォーカーは化け猫を見ずにロンリーとルナヴィンとの会話に入っている。
「全く、貴様は要らないときに来るな。」
そう言いエミリが少し額に怒りマークを浮かばせながら言う。怒っているようだが化け猫は変わらず謎のダンスを繰り広げている。一体何をしているのか、とメアリに聞いたところ
「あれは確か……、"幸福のダンス"でしたかね。」
誰が幸福になるんだ一体。と内心で突っ込みを入れた。どうみたってエミリが幸福になってるわけでもなく、メアリも通常通りで幸福にはなっていない。美優、ウォーカーも同様に、だ。
残りはロンリーとルナヴィンだ。ルナヴィンは恥ずかしそうに懐から赤い、しかし掌サイズの物体を取り出す。それは花を模った作り物、否髪留めであり、ロンリーは静かに頭を差し出す。
———幸福は、あそこか。
ほほえましいな、と思ったのが原因なのか、つい口元が緩まる。こう言うのもいいな、と巡は初めて思った瞬間だった。