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Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.72 )
日時: 2012/06/09 20:05
名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)


                   ……

「そうだロンリー。友人もいることだし、客人を観光に行かせてはくれないか?」

未だ踊り続ける化け猫を無視し、ロンリーに話しかけるエミリ。化け猫が気になっているのか先ほどからちらちらとそちらをロンリーがみている。それはエミリにも分かったらしく、しかし化け猫を無視し続けている。

「なあ、さっきから思ってるんだが……。」

巡は向かいにいるメアリに話掛ける。メアリは「何も言わなくていいですよ」と言い、ゆっくりと立ち上がり息を吸う。

「あれは、この邸宅の配達役です。実は……。お姉さまには内緒ですよ?あの化け猫、名前はキャティーって言って元は悪戯をしでかしていた悪い化け猫で……。噂はこの邸宅まで来ていたんです。でもお姉さまはそう言うの気にしないタイプでして……。
 それで、私が懲らしめたんです。そしたら、彼女が自分から"召使になりたい!"って言いだしたんです。だから今こうして彼女が働いているのは私が原因と言うか何と言うか………。」

「……何か色々あったんだな。」

はい、とメアリは頷く。それ以上の事は彼女は話さなかった。先刻の情報で十分だろう、とでも言うように口を閉ざしたままだ。不意にエミリがこう言った。

「うむ?ロンリー。買出しが完全に済んでいないぞ?"竜神の爪"を頼んだつもりだが?」

ルナヴィンと楽しく話していたロンリーの顔は少し強張り表情は固くなりはじめ、ルナヴィンは不思議に思う。

「"竜神の爪"は売り切れていたんです…。でも、代わりとなる"白竜の爪"を買ってきたので多分そちらで代用出来るかと……。」

ロンリーは悲しそうな表情で言う。自分の失態を人に、仕える人物に指摘されたため怒られたと思い気分を悪くしたのである。

「そうか、売り切れならば仕方がないな。……いや、お使いを頼もうか。少年、お前にだ。」

「俺に?」

エミリは巡にお使いを頼むらしく、巡を指差している。エミリは巡の発言に対し頷きを見せ、微妙に表情は緩み笑みが浮かんでいる。

「どうせウィルディンを観光するんだ。ついでに行ってはくれないか?場所はロンリーなら、知っているだろう?……"ウィルディンの湖"の付近にあるあの、魔道具屋だ。」

———ウィルディンの湖…!

聞いたことのある単語が彼の脳裏をよぎる。そう、"家臣隠し"のよく起こる場所として有名な、湖。正直その場所には近づきたくないが、自分は家臣ではないので大丈夫だろう。

「…分かった。ロンリー、案内を頼めるか?」

彼女は微笑で、しかし意志の篭った目で頷きを見せる。どうやら悪意や敵意を巡に対し持っていないようだ。その安心感なのか、安堵のため息が自然と口から零れた。