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Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.73 )
日時: 2012/06/11 21:39
名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)


                   ……

夕暮れ時。

何時の間にかカジュネス邸は目には見えなくなっていた。どうやら再びステルス結界を張り外部との情報をシャットダウンした様子。しかし彼女たちは巡達にあるものを渡していた。それは一目でカジュネス邸が分かる電子地図で、使わないときは粒子となりコンパクトにしまえるという代物だった。

「えっと、とりあえずは……。」

先に口を開いたのはロンリー。彼女は周りを見渡し、人が多くいるのを確認しながら脳内に行動ルートを作っていく。そのルートは外部の特定の人間でも見る事が出来、今見られている人物は巡達4人のみだ。

「おい、どうしてそこは曲がっていくんだ?明らかにまっすぐ行った方が早くないか?」

口出しをする巡。どうやら最速ルートではないのが癪に障るらしく、先刻から口出しをしてはロンリーに切り捨てられている。

「此処は暴れん坊の番犬がいる事で有名なんだよー。だから、ワンちゃんにガブリっていかれて出血多量だぁ!って死にたくないから、極力この場所は避けないと駄目なんだよ!でもルナヴィンは置いて行ってもいいかも!そうしよう!」

「君僕の扱い何だと思ってるの!?さっきから酷くない!?」

———こいつらいいコンビだな。

呆れてため息を零すも、ロンリーは再びルートを作っていく。そのたびに彼女の綺麗な黒髪が少し揺れる。風は無く、しかし動きを持つ髪は、不自然とも思われる動きを時たまする事があった。

しかしそんな髪の動きでさえ些細な、と感じられるような大きな事が、これから起きようとしていた。





                   ……

それは、突然のことだった。

暴風が、皆を激しく襲ったのである。前兆はなかった。不意に、本当に急に来たのだ。予測出来ていなかったので防御体制もとっていなかった5人は身に付けているものが飛んでいかないようにと押さえつけるのがやっとで、相手の事など見ている暇が無かった。

空を、あるものが飛んだ。色は、赤。

「あっ!」

そう、ルナヴィンがロンリーにあげた髪飾りが、強風のため髪から外れ、風にさらわれて行ってしまったのだ。取り返そうにも髪飾りは風に載り高度をどんどん上げていく。そして彼女の手の届かない場所まで飛んで行ってしまった。

「どうしよう……。あっちは確か湖の方……。」

ロンリーは一歩足を前に踏み込むが、それ以上は踏み込もうとしなかった。自分が"家臣"なため、家臣隠しになるのが怖かったからだ。それをみた巡が不意に、しかし笑顔で、こう言った。

「大丈夫、俺が取りに行ってやるよ。」

くしゃくしゃ、とロンリーの髪を乱すようになでる。彼女の頬が少し赤みを増し、なんだか分からないが殺気の視線が来たような気がした。
巡達の背後…彼らからは見えない位置に、誰かが、満面の笑みを見せ笑っていた。声は出さず、只身を隠し潜み嘲笑うかのように。