ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.74 )
- 日時: 2012/06/11 21:40
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
……
日が、完全に落ち辺りが夜の闇に飲まれ切った頃。少年は湖に訪れていた。足場は満足に見えず感覚だけで此処まで突き進んできた少年は湖の近くにあるものを見つけた。それは髪飾り。
赤い髪飾りを見つけた少年は安堵のため息をつき、それを拾おうとする。すると、瞬間声が飛ぶ。
「あら、こんな時間に何をしているのかしら。」
声を発したのは湖の奥。月明かりが湖で反射し、その声の主を薄暗い黄金の光が照らす。どうやら主は女性のようで、しかし少年は彼女の問いには答えようとはせず、女性は再び声を発する。
「貴方……名前は?名前くらいは言えるでしょう?」
少年は数秒考えた。ここで名前を言っていいのか、と。相手は何しろ面識がない赤の他人だ。赤の他人に個人情報の公開などすれば、運が悪ければ悪用されるに違いない。
しかし、少年は答えた。
「巡、啓一だ。」
彼は名前を答え、もう何も答えなくていいだろ、という視線を目で訴えながら下に落ちている赤い髪飾りを拾い、自分の胸ポケットに入れその場を去ろうとする。
「巡…啓一君かぁ。」
既に巡は踵を返しており、帰る気満々なのだが背後から自分を呼ぶ名が聞こえ、ふと足を止める。そして女性の方を見ると、不敵な笑みを、暗がりなのでよく分からないが確かに笑っている。
———何だコイツ……変な奴だな。
自分はロンリーのためにこの髪飾りを届けなければならない。なので早く帰りたいのだが、どうも目の前の女性が不審で気になるので帰るに帰られない。
「お前……名前は?」
今度は巡から聞く。相手は静かに口を噤む。名前を言わない気か、と思った直後だった。再び、あの暴風が吹いたのだ。
「……っ!!」
今回は髪飾りを胸ポケットに入れていたので飛ばなかったが、危ないところだった。もし拾わずに地面に落ちっぱなしだったら再び探しに行かないと行けない。
ふと、風に違和感を感じた巡はこの状況が危険と判断したのか直ぐに踵を返し帰ろうとする。しかし目の前には壁……風で出来た壁で塞がれており帰れる状況ではなかった。
その時、巡の中の危険信号が黄色から赤に変わった。本能的に"危険だ"と感じたのだ。巡は相手に背を向けるわけにも行かず、脱出する術を諦め相手と向かい合う。
「いいわ、私の名前をお教えしましょう。」
彼女が口を開く。名前を言おうとした瞬間だ。巡に無数の切り傷が出来る。何の前兆もなく、彼の身体がパックリと。所々血が流れ出し巡の顔は一瞬にして苦痛の顔になった。