ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.79 )
- 日時: 2012/06/30 10:32
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
……
「啓一君……」
彼は大丈夫だろうか。いつも強気で、本心を隠しているであろう彼は、内心が丸見えなのである。美優にとっては、巡の気持ちは手に取るように分かった。
———幼馴染でもない私が何で…啓一君の心が分かるんだろう。
もしかしたら、分かっているつもりで、本当は本心なんて読めていないのかもしれない。巡は優しい人だ。自分に合わせて本心を変えているのかもしれない。
ふと、声が聞こえた。それは今考えていた対象の人間、巡啓一の声で、やはり皆の推測どおり湖の方から声が聞こえる。だがその声は途切れ途切れであり、まともには聞こえない。他の皆にも彼の声が聞こえたのか、湖の方を見ている。
先に言葉を作ったのはウォーカー。
『啓一、やっぱり湖の方にいるのか!』
彼は額に汗を浮かばせ、焦ったような顔をする。ルナヴィンはそんなウォーカーを見て不安になったのか、別の意味で汗をかいていた。
ロンリーは、美優の方によってくる。よほど臆病なのか、小刻みに震えている。本当は美優も泣き出して、此処から逃げ出したい気持ちなのだが、
「私が…私が、しっかりしないといけない…頑張れ私!」
皆に聞こえないように、小声で呟き頬を叩く。急な行動にウォーカー達は驚きを隠せず口が開いている。
「もうちょっと、近づいてみよう。もしかしたら突破できるかもしれない」
美優にしては珍しく、自分から動こうとしている。彼女は内気なため、他の人に流され続けて今まで生きてきた。自分の意見など、ほとんど持った事が無い。持ったところで、皆に切り捨てられるに決まっているからだ。
彼女は今まで、そう思って生きてきたのだ。
———でも……。
今は違う。自分の意見を持つ意味がある。切り捨てられたりなどしない。採用される。使用される。それだけで嬉しかった。
自分から率先して動き、暴風壁に触れる。案の定、風の強さで触れた腕がはじかれる。しかしあまり痛みは無く、暴風壁は足止めのみに使用されると推測出来た。
「この壁…与えるダメージは少ないけど、ちょっと厚いかも…誰かこれ壊せるって人…いるかな?」
辺りを見回す。しかし誰も手をあげようとはしない。
———やっぱり誰も手あげないよなぁ…。
ため息をついた。打破出来ないか考えるつもりだが、不安になってきた。