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Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.89 )
日時: 2012/10/12 21:16
名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)


                   ……

 消えかかる足を引きずりながら、彼は全力を出し己が倒すべき敵に向かう。対する敵も、自分と相対しようと攻撃の構えをする。

 敵の元へと走り行き、地面を蹴飛ばし跳躍する。そして手に持つ武器を相手の頭上へと叩き込む。

「はぁっ!」

 命中した。手応えは確かに存在した。が攻撃を受けたであろう敵は微動だにせず、微かに笑った。そして何かが彼の体にあたり吹き飛ばされる。

「…………?」

 何が起きたか理解が出来ていない。結果として敵に攻撃が効かなかったのだが、先ほどの間に何があったのか。

「理解、出来ていないようね。私の技を」

 敵が、口を開く。

「あぁ、全く、な。 教えてくれるのか?」

 にや、と笑う巡に対して、風・鈴は少し顔をしかめる。余裕があるのか、と思っているのかどんどんと顔色が悪くなっていく。

「いえ、教えないわ?面倒だからね。 ……そうだ啓一君。貴方の大切なモノって何?」

「急に言われてもな。答えられるわけないだろ?」

 急な質問に対し、驚いたように目を見開くがすぐまた直る。

「あらそう。 じゃあ手当たり次第に攻撃してみましょうか。 そうねえ……まずはお仲間からかしら?」

「っ!?」

 そう風・鈴が言った瞬間、血の気が引くのが分かった。一体何を言っているのか理解が出来ない。仲間を攻撃する、と言ったのか?と彼は心の内で自問をする。

「うふふ、今血の気が引いたでしょう?貴方の大切なモノは仲間よ。全く、貴方ってば分かりやすいのね。 まあ攻撃は貴方を倒してからにしてあげるけど」

 そう言って風・鈴は足を閉じ両手を横に広げ少し念じる。すると風が彼女の周りに集まりまとわりつくように舞始める。

「さあ、時間稼ぎはおしまいよ。貴方の動きが鈍いうちに私の攻撃を叩き込んであげるわ……!!」

 しまった、と思った。急に問いてきたのは巡の足の消失を進行させるためで、巡の答えなどどうでもよかった、ただ時間を稼いでいただけだったのだ。それを思い、巡は焦り始める。

———くそ……、右足は大体膝のあたりまで消えかかってる……それに立ってる感覚が段々無くなってきてるな……、やっぱり早めに倒さないと……!

 しかしそれは彼女の技を理解しなければならない。巡は先ほど何故防がれたか分かっていないし、今からくる技も全くの初見で、避けれらるという確証もない。無理に突っ込んでいったら高確率で切り刻まれて死ぬだろう。それだけは避けたいが、時間がない。

「くっ……うおおおおおお!!」

 左足で思い切り地面を蹴り、地面すれすれのところまで姿勢を低く保ち、スピードを付ける。風・鈴はまだ両手を開いたままで隙だらけだ。攻撃をしてくる雰囲気でもない。

 行ける。今度こそは。

 命中してくれよ……!と切実に思いながら剣を振り上げ、風・鈴に叩き込む。しかし、剣は風・鈴の一歩手前で何かにぶつかり、衝撃音が響く。

「なっ……!?」

 何かに弾かれ、仰け反る巡を待ち望んでいたかのように風・鈴は開いていた両手を前に突き出し、言う。

「かまいたち!!」