ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.92 )
- 日時: 2012/10/19 19:48
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
……
「!?」
風・鈴がその言葉を聞いて驚くと同時、超人ならぬ速さで地面を蹴り飛ばし、こちらに向かってくる。そして剣を振り下ろす。これは先程まで同じような過程だが、急にパリン、というガラスが割れたような音が響く。目の前には透き通った薄緑の欠片が何枚も散っている。
「まさか…………!私の暴風膜を割るなんて……!?」
風・鈴の周りには膜のような薄い結界が張ってあったため、巡がいくら攻撃しても弾かれたのだ。それに、普通に考えて同じ攻撃をしているのだから暴風膜は割れないはずなのだが。
理由は、彼の振り下ろした剣と跳躍力にあった。勢いを最大まで強め、思い切り振り下ろす。その力は何処か彼のリミッターが外れてしまったような馬鹿力で、それに耐え切れず暴風膜が破けてしまったのだ。
「死ねよ」
暴風膜が失われたことによりほんの少し隙を見せた風・鈴を巡は見逃さず、剣を右に横薙ぎにし、一閃する。当然剣は風・鈴の脇腹に入り、数メートル動く。小さな風・鈴のうめき声が聞こえる中、巡はそれでも手を止めない。まるで何かに支配されているかのように。
いや、何かではない。彼の感情なのだ。彼が持つある一つの感情が彼を四肢まで支配しきっている。彼の脳はその本能的な感情に抗うことができず、ただ従うしかないのだ。
その感情の正体は“憎しみ”。巡自身、何故自分の心がこの感情で染まっているのかが分かっていないが、ただ狂気に身を委ねる。
「別に俺は……怒ってるわけじゃねえけどよ……、俺はやらなきゃいけないんだ。 何を?って顔してるんじゃねーよ、お前を殺すんだ。あいつの為にもな」
もう彼には憎しみ以外の感情が感じられない。精神が崩壊してしまったかのように、不安定な状態だ。だが、巡のその台詞にも、納得がいかないというように風・鈴は反論をする。
「何よ、そもそも貴方がさっさと自分で消えないからあの子が犠牲になったのよ。その武器は贄武器ね? 貴方の不始末で彼女を失ったんじゃないの!」
「五月蝿いっ!!」
ザク、と剣を突き刺す。案外勢い良く突き刺さったため小さなクレーターができる。剣の部分は3分の2程地面に埋まってしまった。
「俺の……仕事はお前を殺して、結晶を集めて元の世界に帰る、それだけだっ!!あいつも……美優も一緒に帰るって約束したのに……お前のせいで…………!!」
再び彼の瞳には狂気の色が灯り始める。敵ながら、これは危ないと思った。彼女に執着しすぎていると、風・鈴は思う。暴風壁の奥では仲間たちが不安そうに見ている。
不意に、風・鈴の脳内にひとつのテレパシーが届く。
『クリスタクト!早くこの壁を破壊してくれ! 僕たちが啓一を何とかするから!!!』
必死な表情になったウォーカーからの、開放請求だった。