ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.93 )
- 日時: 2012/10/19 19:49
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
……
「な、貴方たちを開放しろっていうの!?折角啓一君と隔離したのに……!?」
『今は敵とかそう言ってる場合じゃないじゃないか!そのままだと啓一が壊れてしまう!君にとって不利益だし、それは僕たちにとっても一緒だ!』
彼が言っている不利益とは、“風・鈴が巡の暴走により殺されること”、“彼らにとって巡の暴走により意思疎通ができないこと”。
確かに風・鈴にとってそれは得にはならないし、決して彼らと巡を隔離しなくてはいけないというわけでもない。少し考えながらも、風・鈴は了承した。
———本当にこれでよかったのかしら。
とたんに疑問が浮かび上がる。もしかしたらこれはすべて彼らの罠で、自分が嵌っているだけなのではないか、巡が暴走しているというのは演技で、皆が集結して自分を殺そうとしているのだろうか。
———けど……、啓一君の憎しみの感情は本当だわ……。とても演技とは思えない。
そうだ。第一巡だけでも自分が張った暴風膜を破り自分に攻撃を当ててきたのだ。今更彼らが一緒に集って戦う必要もないだろう。
「一つ……聞かせて」
風を緩めたあと、最終確認として彼らに質問することにした。案の定彼ら……テレパシーを送ってきた少年は、質問の内容を待っている。
『……何?』
「本当に、啓一君は狂ってしまったの?演技とかじゃないのね?」
後半にいくにつれ声が段々と頼りなげになってくる。少年は一度目を伏せ、こちらと目を合わせてから小さく頷いた。
……
『啓一、しっかりしろよ、啓一!』
風・鈴に暴風壁から出してもらったウォーカーたち3人は、早速巡を正気に戻すことに取り掛かったのだが、方法はどれも暴行と呼びかけだけで、旗からはあまり見ていられない状況だった。
「え、ちょっと、大丈夫なの?」
クリスタクトでも引いている。少しやりすぎか、とは思ったものの、巡の意識が戻ってこないので仕方ない。案の定、風・鈴は巡達より少し離れた場所にいる。あまり近距離にいると意識が戻った咄嗟に巡を攻撃するのではということで離れてもらったのだが、今考えれば彼女がそんなことをするような人ではないと後悔している。
「大丈夫……とは言えないんじゃないですか……?」
『そもそも君が武器渡すから……はぁ……』
おどおどしいルナヴィンの返答に、ウォーカーがツッコミを入れる。言われたルナヴィンは「だって……」と涙目になりながら巡を見ている。
『まあ確かに、時暗刻斬剣スパッジオ・スパーダが無かったらあそこまで対等に戦えなかったけどさ。 でも贄武器っていうのは早く言おうよ……』
「僕も……思ってなかったんだ。まさか……人が消えるなんて……!」
え、とウォーカーが言う。ルナヴィンが思ってないことが起きたとでも言うのか。ウォーカーは目を見開いて続きを言うように催促した。
「お爺ちゃんの話だと……消える対象になるのは、自分とか他人の“物”とか……決して他人が消えるということはないんだ。たとえ消えるとしても啓一の右足が消えていったように徐々に消えていくはずなんだ……でも……」
『一瞬で消えたっていうのはおかしい、と?』
「うん…………。 それに、物しか消えないのに、彼女が消えたのはおかしいんだよ。代々贄武器っていうのは他人を消したりできる力を持ってないハズなのに……」
彼女、すなわち美優のことであるが、何故彼女が消えたのかが分からなければきっと元に戻す方法も見つからないだろう。
美優が元に戻らなければ巡の意識もまた元には戻らないということを、3人は無意識のうちに分かっていた。