ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Every day the Killers †7つの結晶編† ( No.99 )
- 日時: 2012/12/02 15:40
- 名前: 鈴音 (ID: LA3FDWTf)
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「はあー……啓一君たち頑張ってるかなあ」
暗い校内、電気もつけずに校長室で一人ため息を付く少年、いや青年がそう呟いた。
「折角啓一君のために時暗刻斬剣スパッジオ・スパーダを差し上げてあげたのになあ。話によれば、そんなに使いこなせていないようだし、逆に贄武器に飲み込まれそうになったって言うじゃないか。大丈夫かなあ。こんなんじゃ一千万年掛かってもクリスタルを集めることなんて出来そうにないけど……」
はあ、と盛大にため息を付く校長悪谷式也がそう呟く。彼は独特な黒髪を掻き毟りながら、二度目のため息を付く。
「そんなため息をこぼしてたら幸せが逃げますよー。 まあ学園長のところに幸せは元々ないですけどね」
「それ、笑いながら言うことじゃないよね?組織ちゃん」
目の前の茶髪おかっぱメガネ、もとい山我先 組織は淡々と式也から言われた言葉を返す。ただ、彼女は少し几帳面なので、式也の日本語がおかしいとちょくちょく直してくる教頭だ。
「いえ、冗談のつもりで言っているので笑って済ませてもいいかと判断いたしまして。 それで、どうなったのですか?彼、巡啓一は」
「ああ」、と思い出したかのように言葉を放つ。が、それに続く言葉がなかなか出てこず、組織は眉間にシワを寄せている。それは彼女なりの“早くしてください遅いです”サインで、最近よく見られるようになった。
「なんっていうかさあ、苦戦してるらしいのね?」
「ほう、興味深いですね。学園長が見かねたあの少年が“苦戦”するだなんて。それで?今誰と戦闘を行っているのですか?」
何げ詳しく聞いてくるよね、と式也は一言、そして机の引き出しの中から数枚の白紙プリントを取り出し、上に手をかざす。すると彼の手から紫色の炎が出現し、白紙を燃やす。炭が残る、と思いきや紙は燃えておらず、白紙上に地図が浮かび上がっていた。
「大胆すぎる炙り出しですね。そこまでして目立ちたいんですかこの不人気学園長」
「いくら教頭だからって、あんまり言い過ぎないでよー、許さないんだからっ! まあ、今彼らがいるのがウィルディンで……」
「ちょっと待ってください、“まだ”ウィルディンにいるんですか?何用で?それに、あそこは別に滞る理由もないんですけど…………まさか、学園長」
「うん、そのまさか」
ニコッ、と満面の笑みを見せる。が、その笑みには裏があるように見え、見るものを不安にさせる類のものであった。
「アレの実験をするつもりですか……。 触媒になったクリスタクトには同情せざるを得ませんね。 見たところによると、まだ発動できていないようですが……」
組織もため息を付く。最近忙しいですね、と再びため息をついてから式也の話を聞く姿勢に入る。それに加え学園長室の机の上に放置されているバインダーを持ち出し、自前のボールペンでメモを取る用意をする。
「……いいですよ、お話になられて」
と、組織が言うと、えっ、と驚いた顔をする式也。どうやら別のことを考えていたらしく、目が点になっている。そして数秒たち、やっと意味が理解できたのか、ちゃんと椅子に座りなおす。
「それでは…………」
式也は、いやらしい笑みを浮かべながら、淡々と話を切り出していった——。