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Re: 黄泉への誘い 〜生きるのって、楽しい?〜 ( No.17 )
日時: 2012/01/08 21:32
名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: FD56xM3z)

第四話『媛香』




手紙をじっと見つめて、それから、何分たっていたんだろう?
気がつけば、教室は人でいっぱいになっていた。
おんなじような制服の、ごく普通の生徒たち。
いつからここにいたのか、解らない。
席の数と、教室にいる人の数は同じ。
全員、教室に来たのに、俺はなんで気づかなかったんだろう?


それほど、波月さんのことが、気になるのかな……?




「真誠、何それー? 手紙?」

誰かがそういって、俺が読んでいた手紙を、ひょいと取り上げる。
誰かと思い、顔をあげると、そこには見慣れた顔があった。


「媛香……。それ、返せよ」

俺がそう言って、手紙を指差すと、媛香は顔に微笑を浮かべた。

「やーだよ。いいじゃん、ちょっとぐらい」

良くないから、返せって言ったんだよ。
俺はそう言いたくなったが、止めておいた。
こいつにそんなこといっても「やーだね」の一言で終わりだろう。



こいつは、飯島 媛香。
中学校で、何度か同じクラスになった事があったので、仲がいい。
髪は茶色がかった黒髪。目はぱっちりとした黒目。
髪型はポニーテール。制服のスカートは校則に違反しないくらいの、ギリギリの短さ。
活発で、元気な印象の女子生徒だ。

中学校にいた時は、よくちょっかいをだされた。
今日も、人の読んでいる手紙を取りあげたりしたんだ。
これからも、こいつからちょっかいをだされるんだろうな。



「……わぁ。なんっていうか、面白い手紙だね!」

手紙を読み終わったのか、媛香が、楽しそうに声を上げる。
面白い? どこが。最後まで読んでないんじゃないか?

「それにしても、波月先輩も、男の人に手紙とか渡すんだね」

……え?

「媛香、波月さんのこと、知ってたのか?」
「うん、もちろん。……だって、さ。






 波月先輩のお兄さん、比良坂 伊月さんだもん」