ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 黄泉への誘い 〜生きるのって、楽しい?〜 ( No.9 )
日時: 2012/01/02 09:47
名前: 九龍 ◆vBcX/EH4b2 (ID: ZGo4Gnz1)

第二話『また会ったね』




通学路で出会った少女のことが、頭から離れなくなった。
学校について、靴を脱いでいるときも。
先生に案内されて、教室へ歩いて行くときも。
少女のことを考えていた。

青信号の時には、横断歩道を渡らない。
なのに。
赤信号の時は、緊張したように、一歩、一歩と、ゆっくりと期待に満ちた足取りで、横断歩道を渡ろうとする。
ふと、少女の顔を見てみると、その顔は新入生が入学式に出ているときと、おんなじ顔をしている。
初めての経験、未知の領域へと足を踏み入れるときの緊張と、不安と期待。
それらを隠すように、顔に浮かべていた、ぎこちない微笑み。


まるで、自身を危険にさらすことに、期待をしているようだった。





少女のことを考えながら歩いていると、壁にぶつかりそうになったり、階段で足を引っ掛けて、転びそうになったりした。
そのたびに、先生に

「緊張しなくていいんだよ、力を抜いて!」

と言われた。


自宅から出て、あの少女に会うまでは、緊張してて、それでいて、高校生活に期待を膨らませていた。
なのに、いまでは、緊張していたことなんて忘れている!




「さて、ここが君達が使う教室だ。まだ、他の人は来てないみたいだし、どっかに座ってて」

そう言って、先生は俺を教室に残して、職員室へ行ってしまった。
どっか、と言われても、何処に座っていようか。
予定より早く学校に着てしまったので、かなり時間が余っている。
俺はため息をつきながら、教室を見回した。


窓のそとでは、桜の花びらがひらひらと舞っている。
教室は、中学校の教室と比べると、少し狭い。でも、机はたくさんあった。
きちっと並べられた机、ちょっと白っぽい黒板。そして、その前には、教卓がある。
黒板には「ようこそ、新入生諸君!」と、白いチョークででかでかと書いてある。
教卓の上には、白い封筒が一つ置いてあった。



「……なんだ、これ」
「さぁ、なんでしょうねぇ? それ」

俺の呟きに、誰かがそう聞き返してきた。
封筒から目を離し、声がした方へ顔を向ける。



俺は、目を丸くした。
横断歩道で出会った少女が、俺のすぐ隣に、当り前のように立っていた。
肩がビクッと大きく跳ねる。
そんな俺を見て、少女は小さく笑った。




「ふふふっ、また会ったねぇ!」