ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: とある愛情と記憶を忘却したぼく。 ( No.11 )
日時: 2012/01/02 16:10
名前: イカ飯 ◆woH8nI2Q5A (ID: SyX71hU.)




五時間目、六時間目を経てぼくは放課後を迎えた。
多分部活とかはやっていないだろうと勝手に決めつけてぼくは市原と一緒に帰り道を共にした。


「川崎ぃ、そういえばお前何で昨日は廃工場になんていたんだ?」
「えっ、ああ………。何だっけ、覚えてない」


別に嘘をついている訳ではない、紛れもなく本当の事である。
今のぼくには今日以前の記憶が無い。

「ふーん、怪しいな……。お前何か隠してる?」
「別に」
「ハッハーン、さては言い出しにくいんだろ?俺達親友だろ、言ってみろよ」
「ぼくと市原は親友だったのか」
「ひどい、酷過ぎる!」
「悪い、知り合い程度には思ってるさ。後ご近所さんともな」
「もっと酷いだろ!!おいっ!」
「ああ、顔見知りか」
「最高に酷いよ!!??」

やばい、こいつ面白過ぎる。反応が特に面白い、こいつは遊ばれる為に生まれてきたのかよ。
と、心の中で軽く市原を小馬鹿にするぼく。市原はまだ怒ったままだ。
そこでぼくは市原に宥めるような言葉をかける。


「悪かった、冗談冗談。友達だよ」
「ハア、仕様が無いな川崎は」

まあ実のところ言えば本当の友情というのも愛という物がわからない影響なのかしっかりとは意味を認識できなかった、それはついさっき気づいた事であった。
ぼくは最初の出来事である程度慣れてしまったので、今のうちを仕様が無いだろうと思った。
こんなところでぼくは市原にある人についての質問を当てた。


「あのさ、市原。相模杏子って知ってるか」
「ぶばあ!!何でいきなり伝説の女武蔵のこと訊くんだよ」
「女武蔵?」
「お前、知らなかったのか。ありえない!マンマミーアー!」
「リアクションでかくて、うざい」

何なんだよ、こいつ。マンマミーアーとか赤いオーバーオールに髭のオッサンか。
時代の流れに適応して無いぞ、今時の子じゃないぞ、こいつは。

「ていうか何で女武蔵なんだ?」
「ああ、それはな。喧嘩で二刀流で木刀を使っていたからだ。宮本武蔵も二刀流だろ?そしてここらでは最強の不良なんだよ、同学年の相模っていうのは。その強さ故に誰も寄せ付ける事の無いって言われてる。まあ、ある時を境に姿を消したんだがな。噂じゃ保健室にいるとも言われてる。あくまで噂だけどな」

噂ジャナイデスヨ。完璧ニ真実デスヨ。
……ぼくは驚き(他の意味での)のあまりロボットみたいな片言になってしまった。
まあ聞かれて無いので全く問題ないのだが。
ていうか何故に保健室という身近なところにいて存在が分からないんだ。
つか、何で世界恐慌が都市伝説化してるんだ。

「保健室に行った奴等は皆そのときの記憶が無いらしいからあくまで噂なんだよ」
「そうなのか、そんなに怖いのかあいつは」
「あいつは、ってもしかして知り合いなのか?そうなのか!?」
「いや、別に」

けど相模ってそんなに怖い奴なのか、ぼくにはそうも思えなかったんだが。
できる事なら少しぐらいあいつのフォローをしてやりたいところだ。
ただぼくには何もいえないだろう、昔の事なんて一切知らないのだから。
あくまで昔のぼくに関係あった世界。今のぼくには全く無関係で関わり合いの無い世界なのだから。






——————————ぼくと市原は自宅であるアパートに戻ってきてその後市原家のドアの前で別れる。
そして自宅の鍵を開けた、ぼくは玄関に身を投げ出した。
疲れた。それが記憶を失ったぼくの今日の学校生活の感想だ。
ただ本当に誰とも話してなかったな、ぼく。
ああ、ほとんど友達作ってなかったんだな。とぼくは確信した。



………そういえば、夕飯買っていないじゃないか。
ぼくははっと思い出す。仕様が無いな、買いに行くか。
ぼくは荷物を置いてコンビニへと向かった。