ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: とある愛情と記憶を忘却したぼく。 ( No.12 )
日時: 2012/01/07 19:46
名前: イカ飯 ◆woH8nI2Q5A (ID: SyX71hU.)

家に帰ったのが6時頃だったため、もう周りは暗闇に包まれようとしていた。
まあカレンダーを確認すると五月で昼と夕方の気温の差はあまりないので、体は適温を保っている。
ぼくは静かに路上の端を歩いていた。ここは道が狭いらしくしっかりと歩道が設けられていない。
まあ白線できっちり車と歩行者を区切っているので問題が無いのだが。

ぼくはこの一本道を出た十字路を左折したところにある商店街の端っこに紛れているコンビニへ向かっていた。
この道は夕方だと人気が無いように感じる、いや人気が無い。
ここは住宅地と住宅地の境目で木々や草花などを除いてしまえば殆ど建物などが全く無い。
つまり交通路にしか利用されておらず、普段は人が居ないのだ。
というのは、ぼくの推測でしかなかったんだが多分少しの誤差はあっても誰もが同じことを答えるだろう。


と、こんなどうでもいい考察をするぐらいぼくは暇である。暇を持て余している。
一人での夜歩きは暇で仕方が無い、鳥のさえずりとかが聞けるわけでも無いしカラスの鳴き声は聞こえるが、そんなものを聞いてもどうにもなら無いし。

ぼくが悩んでいるとき、ぼくの目が何かを捕らえた。その何かとは遠くの十字路にいるどこか見覚えのある一人の女だった。
黒髪のロングヘアーの女でやはりどこか見覚えがある。
しかし暗くて普通に見ているだけでは顔が良く見えない、そこでぼくは目を凝らして彼女を見た。

ああ、あの時の子か。ぼくは確信を持った。あれはぼくがコロッケパンを譲った子だ。(正しくは一人で欲張って少し気まずかったので返しただけなのだが)
こんな暗い時間に一人でうろつくなんて大丈夫なのだろうか。
ぼくは少し心配を掛ける。遠くから見たところ彼女は挙動不審だった。
妙に周りを見渡したりしていて何かを警戒しているようだった。
何をやっているんだろう、ぼくはちょっと小走りで彼女に接近していく。
するとぼくがある程度近づいたところで彼女の様子が豹変する。
彼女は十字路の右側を見てとっさに走り出したのだ、やはり様子がおかしい。
その時、野太い怒号が空に響き渡った。声の主は長ランを着た男。多分ここらを縄張りとしている不良たちだ。幹部レベルの男が十一人もの部下を連れている。

「うおぃ!!てめえら、あの女を探せ!!リーダーの命令だああ!」
「はっ、はい!!」



ぼくは今の不良達のやり取りで確信する事ができた、彼女は今必死に不良達から逃げている。
どんな事情があるかは知らないが、女を追いかけている不良と何者かから逃げているという状況は同じ出来事して繋がるから多分そうだ。

——という事は、相当危険な状況だろ。大丈夫なのかよ。

僕は彼女のことが心配になって走って追いかけることにした。





——どこにいった、あの子。ぼくはさあ追いかけようと思ったときには彼女を見失っていた。
残念だ、何故一番やる気のはいった時にぶつけどころをなくすのだろう。
ぼくは本当は不運な少年ということは知っていたが、その事実から目をそらすためにひたすら自問自答し続けた。
と、ふざけている場合ではない。あの子は何処にいった。放置して置けば不良に何かされるに違いない(あんなことやこんなことでは決して無いからな、……多分)。
ただ、こんなところで直ぐに見失うはずも無いんだがどうしたものか。
この通りは少し曲線状になっていたりはしているが大通りであるため、人目で見つけられるだろう。
まあこの時間帯は様々な人たちが行き来しているので
混雑しているので見失わないという事も無い。

あれ、じゃあ結局何処に居るんだよ。
ぼくのあの子探しは迷宮入りしてしまった。……当たり前のような気がした、ぼくみたいな凡人に金田一少年のような推理が出来るはずが無いだろう!!
と、ぼく。失望する。

……しかし、だからと言って僕が身を引く理由は全く無い。
何故ならピンチに陥ったものを救うのは、常識的に普通に当たり前で至極極まり無いものだから。
例えば、子猫がいじめっ子達に虐められている時は何をすればいい?
答えはこうだ、助けるだけ。
じゃあ、いじめっ子の陰謀で誰かが孤立してしまったら?
答えはやはり助けるだけだ。

それは何故だろう。答えは明快かつ単純だ。
それこそ当たり前だからだ、人は常識に囚われて生きているからこそ当たり前のことをするのだ。

だからぼくはあの子を助ける、それだけの事であった。






——ぼくは一応商店街を一通り回ってきたが、あの子に該当するような人は全くいなかった。
もう商店街を出たのか、別におかしい事ではないけどここの道は単純だから普通逃げ道には利用しないだろう。
ぼくはもう一度商店街の入口へと方向転換した。



何処に行ったんだ、というのはもう何回目だ。
ノーヒントだ。元々何処に逃げたかなんてわからないに決まっている。
テレパシーとかの類の超能力を持ち合わせているわけでは無いので当たり前だ。
——そこでぼくならどう逃げるかという事を試行錯誤して場所に目星をつけることにした。
まずこの状況下。真っ直ぐ突っ走っていく事もあるかもしれないが、もっと複雑な逃げ道をぼくなら探すだろう。
そしてぼくは首を軽く振って状況を確認する。
多分行くなら、路地裏だろう。多分道も複雑で十分不良を撒けると思う。

——いやっ、駄目だ!ぼくはハッと盲点があったことに気づく。
路地裏なんていえば不良が屯している確率は少なくない、いや多いぐらいだ。
そんなところに下手に逃げ込んで他の不良に絡まれたら元も子もない。

——待てよ。ありえる、路地裏ならありえるぞ。今ぼく自身も勘違いしそうになったではないか。
ぼくの推理通りならばあの子は路地裏にいる。だとしたら危うい。
まあ単なる思い込みっていうのもあるかもしれない。だけど今はいち早くあの子を見つけなきゃいけないんだ。
だから可能性だけで十分だ。ぼくは僅かな希望を持って一直線に路地裏へと走った。