ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第一章 愛というものを探求するぼく。 ( No.2 )
日時: 2012/01/02 16:50
名前: イカ飯 ◆woH8nI2Q5A (ID: SyX71hU.)

————————————ここは何処だ、ぼくは誰?
ぼくはとある誰かの家の布団でぐっすりと熟睡していたみたいだ。
見る限りここは六畳とまではいかないが意外と幼稚園児でも数えられそうな数の畳の部屋一間と台所、トイレ、洗面所、風呂場しかない。
察するところ、多分安物件のアパートだろう。結構年季の入っているアパートだ。
というかどうしてこんなところにいるのだろう、そして今までぼくは何をしているのだろう。
それすらわからない。自分の名前も残念ながら覚えていなかった。
多分どんなくだりだったかはわからないが完璧に記憶喪失であった。




そして。自分の心の中から何かがごっそり取り除かれている感じがした。
しかしそれが何かは今のぼくには全く分からなかった。
しばらく静止していると外からドアの鍵を開ける音が耳に入る。
ぼくがドアの方に目をやるとそこには黒髪のセミロングの二十歳ほどの女性が一人。
女性はワイシャツの上から青のベストを来ていてスカートを穿いていてスタイルのいい美人であった。

————————————しかし何故だろう。
全くドキドキするという感情が無い。
もしかしたら親族かもしれないというのはある。



だがそれ以前の話で初対面の女性と見ても全くドキドキしなかったのだ。
そんな自分をぼくは人間の生理的に考えて完璧に枠に外れている感じがした。
そんな時、女性は口を開いた。


「ただいま、真人!遅くなってごめん、残業があったからさっ。後カップアイス買って来たよ」

女性はノリのいい口調で親しげにぼくに話しかける。
ああ、確信した。多分ぼくの姉に当たる人だ。年の差からしてそう察した。
そしてぼくの名前が真人だということも今ので確信した。
そこで記憶がある前の自分と人柄、口調などがずれない様に細心の注意を払いぼくも口を開いた。

「姉ちゃん、お帰り」
「そうそう真人、あんた大丈夫だったの?家に電話掛けても全くでないから、生意気市原を使って探索したのよ。そしたら廃工場で倒れてたんでしょ。だから家までつれてきてもらって、あんたの鍵で家開けて寝かせといてたんだけど」


どうすればいいんだ!ぼくには状況がまったく飲み込めなかった。
いや、何故廃工場なんかにいたんだよ。つか生意気市原って誰なんだ。
まあ様々な成り行きがあるかもしれないがもちろんぼくには分かったものではない。

記憶喪失なのだから。

こんな話題のままでいるのも気まずいばかりなのでとにかく寝る事を決断する。
なので率直に今の本心を姉ちゃんに伝える事にした。


「姉ちゃん、今日はもう疲れたから寝るね」
「カップアイスは明日食べる?」
「じゃあそうする」

ぼくと姉ちゃんは素っ気無い会話を交わした。
そしてぼくは掛け布団を掛けてゆっくりと就寝する。

この時ぼくの胸は謎と不安が多すぎて張り裂けそうだった。