ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: とある愛情と記憶を忘却したぼく。 ( No.20 )
- 日時: 2012/01/22 12:07
- 名前: イカ飯 ◆woH8nI2Q5A (ID: SyX71hU.)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v
……何故仮面?ぼくは突っ込みたくなってしまったが、この状況で突っ込みなんて入れたら正真正銘空気が読めない残念な男になる気がするので必死に耐えた。
金髪の仮面女はジャージに身を包んでいる。やはりジャージと仮面というのは全く合わない、正にナンセンス。
まあそんな事を言うのは礼儀作法がなっていない奴ぐらいなので、ぼくは口には出さない。
とにかくこの仮面女が加勢してくれれば戦況は少しだけ傾かせられる。——畳み掛けるなら今かもしれない。ぼくはそう直感した。
ぼくはまず戦闘態勢を整え、ファイテングポーズを軽くとった。
そして顔を上げる、今不良達は仮面女への対応で精一杯だ。仮面女も木刀の扱いが達人並みで巧みに不良達を翻弄している。
——よし、今だ!ぼくは拳を握り締めて戦場の中に跳んだ。最高の拳を構えて。
「——いっけえぇぇええええ!!」
「ん?何ぃ!!??」
完璧に意表をつくことができた、飛んだ拳はそのまま洗浄の渦中に振り下ろされた。
仮面女はさっとその場から退けているので問題はない。
その拳は幹部にぶち当たり、ドミノの様に他の仲間を巻き添えにして倒れていく。
狙い通りだった。しかし、これはぼくの実力なんかではない。仮面女が加勢してくれたおかげだ。
あの隙がなければ、ぼくは逆転の大技を決める事なんてできなかっただろう。
ぼくはこの仮面女に感謝している。その敬意を示して手を差し出し握手を求めた。
「ありがとな」
「…………」
……ああ、無言だな。まあ、いいや。感謝の気持ちは少しでも伝わっただろう。
ぼくは安堵してあの子の方に振り返った、どうやら少し奥に避難してたらしく被害は加わっていない。
しかし、最初あれだけの口論はしていたがそれは虚勢だったらしく少し身を震わせて怯えている。
そこでぼくはあの子をいたわるような言葉をかけた。
「おい、大丈夫か?」
「…………助けてくれて有難うございます」
「お礼は言わないでくれ、ぼくは当たり前のことをしただけなんだから」
「…………」
あの子はどこか不満気な感じに口を閉じた。
と、そこでぼくは軽く一拍置いて話を切り出した。
「ところで、名前は?」
「筑波八千代です……」
「ぼくは川崎真人だ。宜しくな、筑波。ところでさお前、何で不良達に追いかけられてたんだ?」
「…………。……実は——。危ないっ!」
「え?」
ぼくは筑波の声で後ろに振り返る。そこにはさっきとは違う不良が拳を固めて詰め寄っていた。多分、さっきの不良達の仲間か何かだろう。
それにしても、まずい。体力が底をついていて全く動けない。このままだと真正面から重い一撃を喰らってしまう。
絶体絶命、ぼくはもう倒される覚悟をした。せっかく筑波を助けたのに残念な事だな。そして拳は一直線にぼくの顔面へと向かってくる。
と、その時。
ぼくは拳を喰らわなかった、何故かって?それは仮面女が木刀でその攻撃を受け流してぼくを守ってくれたからだ。
そして仮面女はぼくと筑波に大声を張り上げて言葉を紡いだ。
「ゴー、アウェイ!!」
「……あっちにいけ……?」
そうか、仮面女はぼくと筑波に遠まわしに逃げろって言ったのか。
けど、そしたら——。ぼくは仮面女の方をもう一度見た。そこにあったのは自信に満ち溢れた武士のように勇敢な女の姿であった。
ぼくはその背中に全てを託す事を決意して、逆方面から逃走を図った。
「逃げるんじゃねえぞ!」
「…………」
不良には仮面女という大きな壁を越えることはできなかった。
——仮面女の時間稼ぎも合って、何とか逃げる事ができたらしい。
ぼくはこの時、少し力不足な自分を少し悔やんでいた。