ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: とある愛情と記憶を忘却したぼく。 ( No.25 )
日時: 2012/02/16 17:13
名前: イカ飯 ◆woH8nI2Q5A (ID: SyX71hU.)
参照: http://www.youtube.com/watch?v




「そういえば、川崎君。あそこの唐揚げどうでした?」
「ん、ああ。最高だった」

もちろんそれはお世辞ではない。はっきりいって天国に登ってしまいそうなぐらい美味かった、正にエクスタシー。

「星で評価をつけるなら?」
「五つ星を三乗しても足りないぐらい美味かった。俺の友達に紹介してやりたいぐらいだ」

無論、その友達とは市原の事である。別に紹介することも無いし、そんな必要は皆無であるのだが、必要がなくても紹介したいくらい美味かったのである。

「そ、そんなに美味しかったんですね。た、たしかにあそこのからあげはおっ、おいしいですよね」

うわ、引かれた。少しだけど距離置かれた感がする。途中から漢字忘れてるし。
ぼくが妙に絶賛するから変に思われたな。まあ星を125個も付けられたって困るだろうけど。
わかってくれ、筑波。ぼくはただこの美味しさを伝えたいだけなんだー!
と、心の中で雄たけびを上げた直後、突如彼女はハッとしたような表情をした。
そして顔をしかめてぼくの前に立ち塞がった。

ああ、予想通りだ。

「川崎君、お礼を言わせてください」
「もちろん却下する、ぼくがお礼を言われる筋合いはない」

ぼくは筑波の言葉を遮るようにして、言葉を紡いだ。

「何でですかっ!!川崎君はっ……、川崎君はっ…………、私を助けてくれたじゃないですか、なのに何でお礼すら言わせてくれないんですか……?」
「何度も言わせないでくれ。ぼくにはお礼を言われる筋合いなんて無いんだから」

そうさ。ぼくは彼女、筑波八千代を助けようとはした。

しかしあくまでも助けようとしただけなんだ。

結果を見てしまえば、あの状況のMVPは仮面女だろう。
仮面女がいなければぼくも完璧に病院送りだっただろうし、筑波もほぼ百%の確率で不良達に捕まってしまうだろう。
その状況を避けられたのは仮面女のおかげなので、お礼を言うなら仮面女に言うのが適当な選択だ。
何もしていない無能なぼくにお礼を言うなんていうことは完璧すぎるほどに間違った行為だ。


しかし筑波は真っ先にぼくにお礼を言おうとしてきた。仮面女ではなくこのぼくに。


筑波八千代、すまない。

——無能なぼくにはお前がわからない。お前は何を思ってぼくにそんな事を言っている。教えてくれよ、筑波。