ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: とある愛情と記憶を忘却したぼく。 ( No.5 )
日時: 2011/12/26 15:16
名前: イカ飯 ◆woH8nI2Q5A (ID: SyX71hU.)


「ん……、ふあぁ〜〜〜」

朝っぱらから黄金に輝く青春でも物語っているぐらい眩しい朝日が部屋から指す。

「ぐわあぁぁあ!やめろ、体が……、体が焼けるぅぅうう!!」
と、布団の中で馬鹿らしくぼくはもがいた。


———————————やばいな、自分でも虚しさを感じるぐらいつまらないネタだ(さっきのは吸血鬼の真似である)。
ぼくは虚しさを心に抱きながら、体を腹筋を最低限使って起こす。そして周りを見渡した。
すると家中静けさで満たされていた。どうやら姉ちゃんはもう出かけたようだ。
枕元には書置きがあったのでその書置きに手を伸ばした。


『真人へ。—仕事いってくるね、台所に二千円置いておくから朝ごはんとか賄って。千円といいたいところだけどサービスだから— 皐より』

そうか、姉ちゃんも優しいな。意外と面倒見のいい姉であったとぼくは確信する。
とにかくよっこいしょ、と体を持ち上げてのそのそと台所へ向かう。

そこには信じられない光景が。


二千円札。何故二千円札?絶対めんどくさかったから押し付けただろう!くそお!
いいように利用された感じがしてぼくはその場に立ち尽くして呆れ返っていた。
ともかくぼくは家を出る準備をする。これでもやはり学校には通っていたらしい。
昨夜川崎真人と記名してあるぼくの生徒手帳を確認したところ、桜花高校という公立の学校に通っていたらしい。
桜花は偏差値は高いほうの高校で部活が盛んな学校だと記載してあった。
場所的にはあまり遠くはなく電車を利用するが気軽に行ける場所に位置している。


そしてぼくは二年生で六組らしい、メンバーは分からずじまいなのだが仕様が無いことだろう。
そこは何とかカバーするしか無い、ぼくは自分の可能性を信じて学校へ行く準備を続けた。




そして旅立ち。長き旅に出る勇者、ぼく………。とか格好つけた瞬間に自分の存在を痛く感じる。
まあ口に出ていないだけ幸いだ。こんな事が口に出たら……。


「おいっ、川崎ぃ。お前中二病にでも侵されたんじゃないのか?」
「ん」


これってアリですか?まさかの何か駆け出し勇者が口走りそうな台詞を偶然口にしてしまい、
その恥ずかしい台詞を聞かれてしまったなんて!不覚!
………ていうか誰なんだ、こいつ。

ああ、さては前のぼくの友達だな!?えっと………。

「……赤毛天パチビ?」
「市原だよ!市原飛雄馬。ハッハーン、さてはもうボケが来たな?ハハハっ、お前の寿命は戦国時代の人だなあ」

こいつが姉ちゃんの言っていた生意気市原か。確かに生意気だ。
こんな調子に乗った口調で同じように姉ちゃんに話しかけているといえば、
姉ちゃんの罵倒にも納得できる。ていうかあれだろ。
何でこいつは勝手にくだらない話を進行させているんだ。

「何故淡々と話を進める、市原!まずぼくは成人してもいないぞ、さらに何だ戦国時代って!室町だろうっ、戦国なんて年号は存在しないぞ!」
「うるさいな、確かにお前が突っ込む人だとは思っていたが何だ長ったらしい。ハッハーン、さては突っ込みの鮮度が落ちたな、だからもう少し短くまとめろ!」
「お前は馬鹿だ」

いや、それ以外どんな言葉がある。口癖に『ハッハーン、さては』なんて使うか!
口癖含め古風すぎる!ぼくは心の奥底で雄たけびを上げる。
制服だって学ランで校章が同じ高校生なのに戦国時代と室町時代の区別がつかないのか!
ぼくは只管市原を駄目出しし続けた(別にいじめとかそういう類ではないのだが)。


「馬鹿じゃない!紛れも無い千年に一人の天才だというのは嘘で常識人だ!」
「紛らわしいこと言うんじゃない!」

と、ぼく。勢いで言葉を吐く。
一段落したところでぼくはふと思い立って腕時計を見て、現在状況を確認する。
時間的には多分詰まっており、徒歩では最寄の駅には間に合わないぐらい時間が迫っていた。

「………あ」
「どうした、川崎ぃ」

ぼくはやっと危機的状況を認知する。そして一人で抜け駆けしようとフライングした。
市原の方も僕が駅へ向かっているのを感知して階段を下りた僕に遅れて走り出す。

「ずるいぞ、川崎ぃ、抜け駆けとは卑怯だ!フン、まあいい。俺がお前を華麗にギャフンと言わせて見せる!」
「やっぱり古風だ!」

そしてぼくと市原は必死にくだらない意地とプライドをぶつけ合って駅まで突っ切った。