ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: とある愛情と記憶を忘却したぼく。 ( No.9 )
- 日時: 2012/01/03 22:22
- 名前: イカ飯 ◆woH8nI2Q5A (ID: SyX71hU.)
ぼくと市原は最後の最後までくだらない競争をしていた。
案の定、ぼくと市原は目の前が真っ暗になって校門前で倒れた。
もちろんまだ競争心についた火が燃え尽きたわけではなかったので、五分もせずぼくと市原は起き上がって一歩踏み出す。そして意地を張ってもう一回歩き出す。
とはいう物のまあ結局のところぼくはリタイアという事で靴を履き替え保健室へ直行した。
もう気持ち悪いさえ超越しているぐらい気分が悪かったのでさすがに心に灯っていた火は燃え尽きていた。
しかし市原はそのまま教室というゴールに向かった。
まあ、こんな状態になってもまだ意地を張るとは全く子供だな。
そしてその阿呆と競争している奴も馬鹿だ。それは正しくぼくだった。
一分足らずでぼくは保健室の前まで来た、そしてぼくは保健室のドアを開けた。
「失礼しまーす」
ガシャン!……何故今ぼくは反射的に保健室のドアを閉めたでしょう?
正解はそこに金髪つり目の不良っぽい女子高生がいたからでした。
あはは、しかし今時の不良って言うのは保健室までも占拠して自分の縄張りにしてしまうんだなあ。
ぼくは感心した、そして逃走しようとした。だが手遅れ。
「おい。お前保健室に用があって来たんだろう、入れよ」
「いや、教室間違えました」
「どんな嘘だよ、保健室と教室を間違える阿呆なんているはずないだろ」
「おいおい、まだ気づかないのか。ここにぼくがいるだろ」
「黙れよ」
「ぐあああ!!」
そこで僕の真剣な眼差しは二本の一見するとか弱いがどこか男らしい指に串刺しにされた。
そしてぼくは不良女子高生に保健室に引き込まれた。さらに用心に不良女子高生はドアに鍵を掛けた。
鍵を掛ける必要あるんですか、いつもの防犯対策とかいってもぼくには通じないぞ。
確実ににわざとだろ。ぼくにはこいつの意図が全く読めなかった。
「よお、俺は相模杏子だ」
「世界恐慌?物騒な名前だな」
ああ、メキシカンジョークではあったんだが……。まさかぶん殴ってこようとは思わないだろ!
いや女子だよね、彼女一人称俺だけど女の子だよね。馬鹿力過ぎるだろ。
多分幕ノ内一歩の右ストレートと肩並べられるぞ!
「お前が人の名前を小馬鹿にするからだろ。自業自得だ」
「もうその事はいいんだが……、ぼくは川崎真人。宜しく相模」
「ああ、宜しく。ていうかお前、よく平然と話していられるな」
「ん?まあ、初対面のときは凄く怖かったけどな。今は大丈夫だ」
そして保健室という恋愛シュミレーションだとフラグが立ってしまいそうなところに二人きりでも別にドキドキなんかはしなかった。
もちろん理由なんて分からない。だけど全くドキドキしないんだ、変に言い換えるなら煩悩が消えたみたいな。
「……お前変わってんな。久し振りに見た、お前みたいな奴。まず俺と会った奴は何が何でも俺から逃げるんだが」
「なあ、それより何かぼくに用でもあるのか、ていうか何で保健室にいるんだ」
「保健室登校って奴さ、一応ノートはクラスの奴が持ってきてくれるし何もいつもこうって訳じゃないんだぞ。てきとーに勉強してるし」
「お前の勉強はあてにならないな。てきとーって自称してる時点で馬鹿ってぐらいわかるぞ」
「ば、馬鹿にするな!これでもわかるところはできてるぞ」
「わからないところは何割だ」
「九割九分九厘……」
ほとんどじゃねえか!馬鹿ではないと言い張れる部分が全く無いぞ!
目をそらして口笛吹くな、図星なんだろ!やっぱり図星なんだろ!
「ああ、そうだよ!俺は馬鹿だよ!」
「開き直った!?」
最終的にそう落ち着くか。まあいいか、と一息ついてぼくは違う話題を切り出した。
「ところでお前何で保健室登校してるんだ?」
「…………」
相模はぼくの質問に答えずに黙り込んだ。いやこの場合は答えられず黙り込んでしまったと言うべきか。
まずい事を聞いてしまったみたいだ、さてどうしようか。
この気まずい空気を和ます方法って言うのはないのか。
ぼくは頭の中で丁度いい話題を模索する、しかしなかなか見つからない。
何でこんな時に!?と自分自身に八つ当たり。
「……一応健康体だよ、俺は」
「っそ、そうか。あ、ぼくは気持ち悪いのも治ったし教室に戻るよ、じゃあな、相模!」
ぼくはあの気まずい空気の中で明るい挨拶など出来るわけがなかった。
かと言って暗いムードで終わってしまうのも逆に気まずいので、
何とか虚勢で別れを告げ、ドアの鍵を開けて保健室を退散した。
その時ぼくの背中には相模のどこか悲しげな眼差しが突き刺さったままだった。