ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ペンは剣よりも強し+ ( No.10 )
- 日時: 2012/01/03 23:14
- 名前: 清村 (ID: vgnz77PS)
第2章 自覚
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カツ…カツ…カツ…
足音が、冷たいコンクリートの様な物に反射する
音が響き渡る
ギイ…
扉が開く時の木材のきしむ音が足音を消した
白いフードの男、その男はゲートと言った
「調子はどうだ?アティ」
「体には慣れた」
その紅色の髪の毛をした青年は、姿かたちは穂村 泰嗣だった
「でも夢を見るんだ」
「夢?」
「あぁ、沃哉っていうやつが何時も出てくる。恋しいようだ、こいつの心は」
「壊しておくか?」
「いや…それはもったいない」
「そうだな…」
—
『あのオルファという途尋の化身、気になりますね…。おそらく【ゼロの希族】だと思うんですよ』
「ぜろのきぞく?」
『非五大元素では無い[氷]の属性を宿した化身のことを言います。それ以外の情報は無いです。ですから、オルファという化身を接触を持ちたいのです』
「持てばいいじゃないか…」
沃哉は半分興味を示しているが、半分無関心な態度を見せる
『それが無理なのです…。化身同士は人間界ではコネクトできません』
「人間界では…ってあたかも他に世界があるような感じだな」
『…』
ヨークは返事をしなかった
「あー————!!!」
ド—————ン!!
コンクリートに何かが深くめり込んだ
さっきの声からして、おそらく人間が落ちてきたのであろう
沃哉はそういうことには慣れていた
「君、大丈夫?」
背丈、からして小学生高学年ぐらいであろう
でも服装は少し微妙だった
「いてててて…」
傷一つ付いていない
すこし土にまみれたいるだけだ
「もしかしたら君が墨川 沃哉?」
寛大的な沃哉でも、年下の人にタメ口を使われるのだけは許しがたい
でも今は登校中、無駄なトラブルを避けたいため
軽くあしらった
「俺は沃哉ですが」
「君は筆人だろ?」
「!?」
「図星だね…」
汚れた服を掌で払いながら、淡々としゃべりだす
「知ってるんだよね僕、この学校には筆人が3人いる」
いったい何者なんだ、そんな視線を謎の少年に浴びせる
「あとこの学校には3人いるでしょ?」
「はぁ?」
沃哉は驚いた
莉緒、途尋、そして沃哉、あと1人は誰なんだ…
そのことでいっぱいだった
「知ってるでしょ?ねぇ、その3人知ってるでしょ?僕、名前までは知らないんだ、連れてきてよ」
子供のくせに、何も言い返せない自分が少し情けなかった
ここで、莉緒ち途尋を連れてきてどうなるのかもわからないし
かといって、断るのも何か申し訳ない
「おっはよー沃哉」
一番出会いたくなかった声が背中から聞こえてきた
沃哉はしきりに無視し、他人を装った
莉緒にはとても申し訳ないと思った
「ねぇ沃哉、聞こえてないの?え?この子友達?」
「あぁ、俺のいとこなんだ」
「へぇ〜、私南月 莉緒っていうの、よろしく」
「よ、よろしく…」
莉緒は手を差し伸べて握手をした
その謎の少年と莉緒の手が触れた瞬間
莉緒の手が光り出した
「え!?」
「…2人目発見」
莉緒は手を振りほどいた
「沃哉、この子何者なの?」
「分からない…」
『その人には逆らわない方がいいです』
「何言ってんだヨーク、もしかして知ってるのか?」
『えぇ、この人はエリア5世様です』
「エリア5世?」
エリア5世という、ルイ14世みたいなニュアンスの、おそらく貴族かなんだろうか
『莉緒、この人はエリア5世様よ』
「エリア、5世?』
『筆人の先祖の末裔、創造の神エリアの末裔なの』
「……そう言われてもぱっとしない…ごめんリヴァ」
「お前、偉いのか?」
「口のきき方が悪いぞ!!」
でも見るからに年下
敬語なんて使いたくない
「君たちは筆人なんだ、一緒にきてもらう。他の二人には僕の使いに行かせる」
「ちょっと待ってくれ、行くってどこにだ」
「アッバース」
「あっばーす?」
「話は後!!時空印【エテモ】」
地面に不思議な色の印が広がった
「なっ…」
沃哉、莉緒、エリア5世という少年は
淡い光に包まれて消えた
朝っぱらから変な少年に絡まれ、筆人だとバレ
挙句の果てには名前も知らない世界へ連れて行かれる
もう常識は通用しない、俺はもう筆人なんだ
筆人という、異端の種族なんだ、そう自覚するしかなかった
もしかすると、今まで住んでいた世界が、月兎町が、ウソだったのかもしれない
筆人というメモリーが覚醒するまで、俺たちは飼育されていたのかもしれない
理不尽と言う名の神様に