ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ペンは剣よりも強し ( No.4 )
日時: 2011/12/31 13:30
名前: 清村 (ID: vgnz77PS)



グォォォォォ!!


人間型剣奴は、足元から噴き出してくる大量の水で
粉々になった


「…やった…」


風の壁が消えたと同時に、敵の安否を確認した2人の表情は
安堵に満ちていた
沃哉は髪の毛が濡れている
莉緒は何故かそんなに濡れていなかった


「ありがとう、沃哉」
「い、いや、莉緒が守ってくれたから!ほら、印が書けたんだよ」
「そう言ってくれると嬉しい…」


いつの間にか月が夜空に出ていた
通学路はあまり人目の付かないところだったので
幸い、今の騒ぎは大丈夫だっただろう


「じゃぁね!」
「う、うん…」


T字路で別れた


『やはり彼女は筆人でしたね』
「…そうだな」
『元気ないですね』
「いや、泰嗣に引き続き、莉緒が[こっち側]に来てしまったから、哀しいんだよ。一番巻き込みたくなかった人なんだ」
『その子を守ることですね』
「じゃぁ力を貸せよ!」


沃哉は静かながら怒りをヨークにぶつけた


『無理なんです』
「なにがだよ」
『沃哉はまだ弱いです、覚悟や、心が』
「…」


沃哉は何も言い返せなくなった


『ばれちゃったね…一番巻き込みたくなかった人に』
「…沃哉と同じ時期に、私もこうなったみたい」
『筆人は守る人だから、莉緒が守らないと』
「沃哉を!?あの時は勢いで言っちゃったけど…」
『そうよ、彼の土台はグラついてるの、あなたが支えないと』
「……」
『そ、そんな難しく考えることは無いわよ』


リヴァは焦ったように繕った


「だ、大丈夫、ちょっと疲れただけ、帰ろう?」
『そうね』


あの日の様に、月が神々しく輝いていた





ほんとは俺も【暗殺する者】だったんだよ…
お互いの職業が分からない【王様ゲーム】は、実際何をやっても良かった
【家来】を名乗って近づき、【王様】を殺す事だってできる
でも俺は、俺は、どんな職業でもお前を守った





朝日はいつものように顔を出す
新聞の一面に目を
疑うような記事を見つけた


『下水管の無い道路のが水に濡れていた
地割れの様子もなく、昨日は快晴だったため、雨は降っていない。しかも目撃情報はそこのみであった』


「…」
『大丈夫ですよ』
「だといいんだけどな…」


通学路には対地入り禁止の黄色いテープがあった


「沃哉!!」
「莉緒…」
「一緒に行こう?」
「あ、あぁ」


それから2人で通学した
別に幼馴染だったから、周りの目は気にしなかった


「おはよー」
「おはよ」


教室に飛び交うあいさつ
泰嗣をは何時も朝に言葉を交わしていたが
もうそれはできないと分かると、心が痛かった


朝礼の時に中間考査の結果が帰ってきた
沃哉は中の上の成績だった
莉緒は上の中だったらしい


「やっぱりすごーいい門さん!!」
「どうやったらそんなに点数取れるの!?」


教室の前の方で盛り上がっている
別にいつものことなんだが


門 留美(かど るみ)は、学校一の優等生
頭はとてもキレる


『沃哉、彼女はだれです?』
「この学校で一番頭がいい人、ツンデレな性格で、一部の男子から好かれてる」
『そうなんですね…』
「どうかしたのか?ヨーク」
『あ、いや…なんでもないです(彼女は…)』


「門さーん」


1人の男子が門に近づく


「なんですか、霜辻君」
「いや、勉強教えてもらいたくてさ!」
「結構です…」


門は何処かへスタスタと歩いて行った


『彼は?』
「あぁ、霜辻 途尋(しもつじ みちひろ)ってやつで、門のことが好きなんだ。あいつが、どうした?」
『いや、なんでもないです(彼は…)』


沃哉はヨークの様子が変だと気付いたが
深くは触れなかった
でも、ヨークが興味を持つということは、何かしらこちら側と関係してるだろう
うすうす感じていた


「沃哉、帰ろう」
「あぁ、そうだな」
「今日は昨日みたいに、敵は出てこないよね?」
「俺に訊かれても…わかんないよ…」
「そ、そうだよね。ははっ」


沃哉は莉緒の歩幅に合わせて歩いた
いつも以上に時間だ掛かってるように感じたが
何故か、無駄ではないように感じた


「待って!!」


莉緒が声を出して、足を止めた
嫌な予感がした


「誰かいる…」
「誰もいないぞ?」
「待って沃哉」


莉緒は一歩手前に出て言った


「そこにいるでしょ…門さん」