ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ペンは剣よりも強し ( No.6 )
- 日時: 2012/01/01 13:43
- 名前: 清村 (ID: vgnz77PS)
『イェニチェリ…記憶にあります。彼女の基属性は[雷]ですね…あの殺戮に取りつかれた思考は相当ですね…。莉緒の化身リヴァが気付けばいいんですが』
ヨークの声が沃哉にしか聞こえない以上、こちらは圧倒的に不利だった
莉緒には聞こえなかった
「リヴァ、傷を治す印なんて無いの!?」
莉緒はひどく動揺していた
目の前で人が切られた
あまりに速すぎて現実を受け入れるのが遅れた
『回復系印は習得が難しいの…あなたをもってしても書けるかどうか…』
「教えて!!沃哉は私が守るって決めたの!!」
莉緒は必死になって言う
「何を1人でごちゃごちゃ言ってんの?殺されたいようね!!」
門の長剣が黒黄色く光り出した
「壱式【雷ざ…グッ!!」
「!?」
「く、くそ…ここにきて…」
間一髪、漫画のようなタイミングで門、イェニチェリは膝をついた
するとその瞬間握っていた長剣が砕け散った
イェニチェリは倒れこんだ
「あ、危なかった…リヴァ、回復系の印、教えて!!」
『焦らないで…』
「そう焦るなよ」
男の声がした
すると地面から扉が現れた
『彼は扉人よ…』
「ヒンド?」
「大丈夫、君たちの敵ではないし、味方でもないから、殺しもしないし、生かしもしない」
「…はぁ、はぁ」
莉緒は息を切らせている
「こいつは連れていくから、君に行っても意味ないがな」
「あ…」
目の前で何が起こっているのか把握もできない状況で
言葉を発することは、動揺しやすい莉緒にとっては至難の業だった
「ま、待て…」
「よ、沃哉!?」
沃哉は口から血を出しながら声を出す
「お前、げ、ゲートだな…アテ、泰嗣はど、何処だ」
「泰嗣?あ、アティね、あいつは今…いいや、言わない。じゃぁね」
「ま、待て!!」
沃哉の右手が深蒼色に光り出した
「(あの光りはやはりヨークの力か…)……『岩塩と金の塔』」
「…??」
『…岩塩と金…ですか』
白いフードの男ゲートは倒れこんだ門、イェニチェリの体を担ぎ
扉の向こうへと消えていった
「く、くそ…」
「喋らないで沃哉、今、助けるから」
「莉、緒…」
沃哉は目を閉じた
—
喧嘩とか、いつも仲裁に入る立場だった
自分から仕掛けるなんてことはしなかった
俺は何時も言われていた
『沃哉はどっちの味方なんだよ』
中立的な立場を保ってきた俺は
怪我することもなく、誰かを傷付けることもしなかった
でも
誰かを守るために傷つくなら本望だと
大切な人を守るためなら死んでも別に大丈夫だ、と
きっと天国に行けるから
—
「沃哉!!」
『沃哉、大丈夫です?』
沃哉は目を覚ました
そこには涙目になった莉緒がいた
『莉緒が傷を塞いでくれたんですよ』
「まじか、あ、ありがとう」
脇腹の傷が塞がっているのを確認した
でも完全に殺された感じがしていた
『回復印…彼女は、すごいですね』
「莉緒が、やったのか?すごいな、ありがとう」
「(褒められた!!)…う、うん」
莉緒は顔を赤らめた
『莉緒、顔赤いよ』
「…」
道路に飛び散った沃哉の血は
しっかり洗っておいた
—
クラスメイトが2人も不登校になると、さすがに何かがおかしいと
勘づく生徒たちも出てくる
「おい墨川、最近泰嗣はどうしたんだよ、いつも一緒だったろ?」
「あ、いや、連絡とれないんだ」
「へ〜そうなんだ…」
変な奴の体乗っ取られて、小指を噛みちぎり
自分を襲ってきたなんて、言えない
言っても馬鹿にされる、中二病だと言われる
担任の先生は、感染性胃腸炎だとか、喪中だとかいろいろ言っていた
もちろん門のことも
「なぁ沃哉、門さんって本当に喪中だと思うか?」
「なんだよ霜辻、先生がそう言ってんだから本当なんだろ?」
『彼はもしかしたら…』
「もしかしたら?」
「何だよ沃哉、もしかしたらってなんだよ、何か知ってんのか?」
「あ、いや、なんでもない(ヨークめ…)」
ヨークと会話する時、こっちも声を出さないといけないのか?
沃哉はずっと疑問に思っていた