ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ペンは剣よりも強し+ ( No.9 )
- 日時: 2012/01/02 12:02
- 名前: 清村 (ID: vgnz77PS)
大量の水が巨人型と途尋を遮った
「おい、何すんだ沃哉!!」
「落ち着け途尋!!」
「待って2人とも!敵はまだ向こうにいるのよ!」
一時の沈黙が流れ
その沈黙を破るようにして巨人型剣奴が水を切った
グオォォォォ…
破壊された右足を引きずりながらこちらに向かってくる
剣を振り下ろす
地面が割れる
衝撃波は周りの民家を破壊していく
「守護の印【禁水】!!」
道路沿いにある民家は次々と水の箱に包まれていく
「莉緒、頼む!」
「分かった!回復印【再回】!!」
半壊していた民家が再生していく
「途尋、守らないとダメなんだ。途尋のやり方は、ちょっと違う…」
「うるさい!!守護の印【凍陣】!!」
途尋を周囲の気温がみるみるうちに下っていく
民家を包んでいた水の箱は凍りつき始めた
巨人がまた剣を振り下ろす
衝撃波は凝りついた民家を粉々にしていく
「……途尋ォォォ!!!」
沃哉は左手で途尋の胸ぐらをつかむ
途尋は冷めた顔をしている
「これがお前のやり方かよ!!見てみろよ、せっかく莉緒が再生してくれた家が粉々だ!!中には人がいたかもしれないんだぞ!!」
途尋は少し黙った
「うるせぇ…守るってのはないろいろ種類があるんだ。世界を守るって大きなこと言ってもいい、大切な人を守るって言ってもいい、でもな…結局は皆、自分の体が大事なんだよ!!」
途尋は胸ぐらを掴んだ沃哉の左手を振り払った
「俺は知ってんだ、もう誰も守れないって、昨日思い知ったんだ」
途尋は制服を脱いで脇腹を見せた
そこにはいくつもの傷が
「そ、それは…」
「門さんにやられた…」
「!!」
「昨日の帰り道、門さんとはち合わせた。でも俺がはち合わせたのは門さんじゃなかった。殺戮を生きがいとした剣人になっていたんだ」
沃哉と莉緒は知っていたから驚かなかった
驚いたのはそっちではなく、途尋が門と接触していたことだ
「何もできなかった。圧倒的に押されていた。守ってあげられなかった。つらかったと思う」
「つらい?」
「体を乗っ取られていたといって、その時の記憶が無いわけじゃない」
沃哉もヨークに体を預けていたから分かる
「護ってあげられなかったんだ…」
「…」
「お前らも、門さんと戦ったんだろ!?なぁ!!」
「あ、あぁ…」
「なんで守ってくれなかったんだよ…だから、おれは、」
途尋は地面に伏せて泣きだした
「じゃぁ、門を守れなかった分、他の人を守るんだ」
「へ?…」
「守るんだよ、剣人や剣奴から、みんなを」
「…グスッ」
「これは俺と莉緒とお前との約束だ」
途尋の涙は一瞬にして止まった
「守ってやるよ!!」
途尋の右手の光が大きくなった
「力を貸してくれ、オルファ!!」
『やっと名前よんでくれたな』
『彼の化身はオルファという名前の様ですね…でもおかしいですね』
「なんでだ?」
『後で話します』
巨人型剣奴は周りの建物や地面をドンドン破壊していく
「守護の印【風塊】!」
「守護の印【禁水】!途尋!」
「…わかった、守護の印【氷塊】!!」
沃哉の出現させた水の箱は巨人型剣奴の下半身は箱に包まれ
途尋の印でその下半身は凍りついた
「行け!途尋!」
「あぁ」
途尋は筆を投げた
今までとは違う、もっと、自信を持った投げ方だった
凍った肉が地面に転がり
流れ出した血はみるみるうちに凍りついた
「守護の印【止水】!!」
剣奴の足元から大量の水が噴き出す
上半身しかない巨人型は消えていった
—
筆人の正しい戦い方なんて分からなかったけど
途尋の戦い方は見ただけで間違ってることに気付いた
自信は無かった
自分の戦い方さえ正しいのか分からなかったけど
でも、莉緒は正しいって言ってくれた
守ることには変わりないって言ってくれて
安心した
剣人や剣奴は何のために人を殺すのだろう
人というより、筆人を狙うのだろう
俺は戦うよ、泰嗣
もし、お前が俺を殺そうとしても
俺はお前を守る
どうやってかは分からない
でも、アティっていうやつから絶対、守ってやる
—
『彼の属性は[氷]です。でも[氷]属性の化身には基本【ゼロ】という名前が付きます』
「ゼロ・オルファっていう名前なんじゃないのか?」
『おそらくそうだと思いますが、彼は危ないですね』
「…?」
『ほら、学校に送れますよ』
「やべっ」
また1日が始まった
でもどうせ、また剣奴が出てくるだろう
心の奥では、想っていた