ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 選択。 ( No.5 )
日時: 2011/12/24 00:28
名前: 赤信号 (ID: nxCracO9)

それから、何分か経った。
生徒は全員席に着く形になり、真琴も真っ直ぐ前だけをみつめていた。

そして、ガラガラッと大きな音を立て扉が開き、そこには、少し太り気味な30代前半くらいの男が立っていた。
こいつが担任なんだな、と頭の中で計算し、そいつの後ろにいる綺麗な女も確認した。

副担任だろうか。髪を後ろに束ね、化粧はしていないが目が大きく肌も綺麗だ。
こんな先生、小学校にも中学校にもいなかったタイプだ。
服装も短めの赤いスカート、上は白のブラウスだ。少し寒そうだが、本人は気にしていない様子。

ざっとこんな感じだ。

男がギシギシと音を立てながら教卓の前まで歩き、一言。

「初めまして。俺はこの1年1組の担任になる『林 実』といいます。
これから1年間、宜しく頼むぞ。」

見た目に似合わず爽やかな名前だ。

「んで、この人はお前達の副担任になる『真藤 雅』先生だ。
ちゃんと憶えとけよ。」

真藤先生が口を開く。

「宜しくお願いします。」

透き通った綺麗な声、見た目と一致の名前、この先生はやばい。
真琴は少し、真藤先生をみつめる。気付いてこちらを向いた彼女は、ニコリと微笑んでみせた。

「・・・じゃあ、今から自己紹介をしてもらうぞ。
名前と、誕生日と、好きなものの3つを言ってくれ。」

林先生が元気よく言う。

「ちなみに、俺は5月6日生まれで、好きなものは釣りだ。」

こんな奴が船に乗ったら水没しそうだが、黙っておく。
一番前の席の奴が立ち上がり、こちらを向いた。

「相田 優斗です。2月11日に生まれて、好きなものはサッカーです。」

少しチャラいが、表情は優しい。容姿も良い。

「今岡 桜です。8月2日生まれで、好きなものは星の観測です。」

少々黒髪が重たい印象にしている。

「今田 一輝です。6月28日生まれで、好きなものは漫画です。」

銀縁の眼鏡をかけてるが、頭は悪そうだ。

それから何人かの自己紹介が終わり、次は真琴の番だ。
こういうときは、あまり緊張しない。

前の席の奴が立ち上がる。

「加藤 誠です。9月9日生まれで、好きなものは手芸とか、何か作ることです。
宜しくお願いしまーす。」

彼は眼鏡をかけているし、真琴との共通点は制服くらいだ。
しかし、同じ名前の奴が前後で座っているとは奇妙なものだ。

「北川 真琴です。4月2日生まれです。好きなものというか、寝ることが好きです。」

林先生は笑う。

「お前ら、名前一緒なのか。宜しくな。」

加藤はニコッと林先生に笑う。真琴は無視した。

それからは頭に入っていない。
真琴の頭の中には「加藤 誠」の名前がぐるぐる回っていた。

大体の人は、同じ名前なら少し親近感を抱く。
しかし、真琴は嬉しくなかった。

何か、何か引っかかるんだよな。

加藤は、真琴の「友達になりたい人物」から除外された。