ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 選択。 ( No.6 )
- 日時: 2011/12/28 12:21
- 名前: 赤信号 (ID: nxCracO9)
「起立、気をつけ、礼。」
相田がそう言うと、皆立ち上がり大きな声で、
「さようなら。」
真琴は鞄を持ってさっさと教室を出る。
階段を下りている途中、
「ちょっと待ってよ。」
と、後ろから誰かに呼ばれた。
この明るくて馬鹿丸出しの声は・・・。
「何だ、加藤君か。」
「『まこと』で良いよ。俺も『まこと』って呼ばせてもらうし。」
加藤は、真琴に向かって笑顔を向ける。
こういう人間が苦手なので友達になる気も下の名前で呼び合う気もない。
それに、こいつは「友達になりたい人物」じゃない。
頭も悪そうだし、駒としても使えなさそうだ。
「じゃあ誠、もう俺に話しかけて来ないでください。」
真琴はそそくさと逃げるように階段を下りるが、加藤が行く手を阻んだ。
「そんなこと言うなよ。」
真琴が歩く隣に、加藤がついてくる。
これは、小中学校で味わっていたが、これを高校でも味わうとは。
しかし、加藤だと嬉しくない。
校門を出た時に、1人の女性がこちらへやってきた。
大学生くらいだろうか。薄ピンクのワンピースにブーツを履いている。
「あ、あの。1年生ですよね?」
「あ、はい。そうですけど・・・。」
こういうのに慣れない真琴は少し戸惑う。
すると、隣にいた加藤が「あっ」と声を上げた。
「姉ちゃん、何で此処にいんの?」
加藤が驚きながら近寄る。
真琴の方が驚いた。言われてみれば顔は似ているが、加藤の姉はかなり綺麗だ。
元々、加藤も顔は良いのだが。
「いや、実は今から大学の友達と遊びに行くんだけど、鍵持ってないでしょ?
だから持ってきたのよ。」
「あー、有難う。楽しんできてね。」
加藤は姉にニコッと微笑む。これは通常なのだろうか。
そして、加藤の姉はこちらを向いた。
「貴方は、誠の友達かな?もう友達できたの?」
「えっと、彼は」
真琴は加藤の声を遮る。
「初めまして。先程、誠君に声をかけて頂いて。
こんなに礼儀の正しい弟だなんて、お姉様とご両親のしつけが良いんですね。」
「まぁ、誠の友達なのにこんなにお世辞が言えちゃって。
よかったね誠。賢いお友達ができてね。」
加藤はキョトン顔で真琴をみつめる。滑稽だ。
「じゃあ、私行くから。ばいばい。」
加藤の姉は真琴の帰る方とは逆の方へ歩いて行った。
真琴も歩き出す。しかし、隣には加藤がついてきていた。
「何で、あんなこと言ってくれたの?
さっき、話しかけるなって・・・。」
「超優しくて可愛くて綺麗なお姉様じゃん。
お前と友達になれば、お姉様との交流もできる。
それに、お前面白そうだしな。」
最後の一言は少々嘘混じりだが、彼は少し面白そうだ。
加藤はふふっと苦笑した。
彼は、真琴が家に着くまでついてきていた。
途中、何度か加藤はそわそわしていた。
少し経ってから、その意味に気付いたのだが。
真琴は気付いていた。
きっと彼は真琴と逆方向の方に住んでいる。
それでも着いてきてくれたということは、真琴と本当に友達になりたいということだろうか。
自分の部屋に入り、真琴は少し微笑んだ。