ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 追憶のエリオル ( No.2 )
- 日時: 2011/12/22 17:12
- 名前: 藍月♯0531 (ID: YrQV5zvB)
1.調理部騒動
「おい、シップウ。どうしたんだ?」
駿河先輩の声が上から聞こえる。
「・・・ほっといてください。それに、俺の名前はシップウじゃないです」
「大事な後輩が落ち込んでいるんだ。ほっとけるわけ、ないだろ」
顔を伏せている俺のほほを突く。ヤメテクダサイ。
「やめてくださ・・・・・・はっ」
よく見ると口元に生クリームが。
「一つ、聞いても良いですか」
「なんだ?」
「今日、調理室にはいりましたか」
「ああ。そうだけど」
「冷蔵庫を開けましたか」
「うん」
「中に入ってたスーパースペシャルエクセレントベリーナイスショートケーキを食べましたか」
「えっとそんな名前だったかは知らんけどショートケーキなら食べた」
「こるぁぁあああああ!!」
「ひぇええぃ!」
5分後、俺達の前に現れた顧問のメグせん(牧本先生)により、攻撃は中断された。
「駿河くんが悪いと思うけど、ケンカはよくありません。分かりましたね」
「俺は一方的に叩かれてただけなんだけどな」
「駿河くん?分かりましたよね?」
「は〜い」
駿河先輩は不満そうな顔で返事した。
「あら?とかなんとか言ってたらもう下校時刻じゃない」
「シップウ、今からちょっと空いてるか?」
「え、まあ空いてますけど」
「おお!じゃあ決定だな!!」
「ちょっと待ってくださいよ〜」
俺は駿河先輩に無理矢理ラーメン屋へと連れてこられた。
「はあ、なんですか。それは」
「見れば分かるだろ、沖縄旅行のチラシだよ」
「で、なんで俺に」
「俺さあ、この年だからそろそろ旅の一つでも、と思ってな。しかし一人も寂しい。お前も連れてってやる」
怪しい。かなり怪しい。こういう時には必ず裏があるってもんだ。
「旅行代金は?」
「・・・・・・もちろん自費でお願いする」
「じゃあ行きません」
「お、お願いだ、来てくれぇ〜」
「なんでですか」
「実は、沖縄にいる婆ちゃんの所に奉公に出されちまってよ」
「奉公?」
「『来月の冬休み、家でなまけてるくらいならお婆ちゃんの手伝いでもしてきなさい』って母さんが」
「別にいいじゃないですか。沖縄にいけるんですよ?」
「その婆ちゃんってのが超こええんだよ。だから俺は一人で行くのが嫌なんだ」
「わがままな。自業自得のくせに」
「なんかいったか」
「いーえ」
なんと俺は冬休み始まって一日目、成田空港に立っていた。
あの迷惑な先輩の頼みに屈して。
「おう、やっと来たか。待ってたんだぞ」
「その言い種はないでしょう。渋々来たんですよ?」
「しー!黙れだまれ。こいつも居るんだぞ」
横にはまるで人形のようにちょこんと腰掛けている先輩の妹がいた。
そういえば、先月退院したばかりの妹に頼りがいのあるところを見せたいとかいっていたな。
「おはようございます、八代さん」
「は、はあ・・・・・・」
先輩の襟をつかんで小声で言った。
「なんで妹さんがいるんですか・・・!!(怒)」
「い、いや、せがまれてな」
「俺いらないじゃないすか!」
「ま、まあ、妹は体力もないし、手伝えないだろ?そういうことで・・・」
「手伝う?まさか俺をこきつかうつもりだったんじゃ」
「ひぇっ!すまんすまん。だから今は、な、落ち着いてくれ」
裏がありすぎんだろ、この先輩。
「お兄ちゃん、八代さん、喧嘩しないでください・・・今から楽しい旅行じゃないですか」
「大丈夫、これは男の挨拶だ。ワハハ」
「・・・・・・(死ね)」
>>5
