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Re: 追憶のエリオル ( No.5 )
日時: 2011/12/22 17:25
名前: 藍月 ◆e67wD8MYCo (ID: YrQV5zvB)

2.婆さん騒動



「皆様、まもなく離陸いたします。座席ベルトを今一度お確かめください」
アナウンスの後しばらくすると機体が動き出したのが分かった。
「私、飛行機乗るのはじめて!」
「ばあーか。お前が1歳んときに乗っただろ」
「ふーん、そんなの覚えてるわけないでしょ。だからはじめてと一緒だもん。ねっ!八代さん」
「えっ・・・ごめん聞いてなかった」
「大丈夫ですか・・・?」
なんだかぼーっとしてた。俺、飛行機乗るのはじめてだから。
「ええっ、そうなんですか!?」
「まじかよ!?」
・・・聞こえてたらしい。
「じゃあ、私と一緒ですね。えへっ!」
やべっ、この子可愛いかも・・・・・・。
「なにボーッとしてんだよ」
はっ、いかんいかん。
「昨日寝不足で・・・」
「これ食べたら目が覚めますよ」
「ありがとう」
パクッ・・・・・・ゲッ。こ、これ、
「辛ぇえええええエエエエぇ!!!!」

「おい。着いたぞ」
「ムニャ・・・・・・へ?」
「沖縄だよ。お・き・な・わ」
「へ?・・・へ?・・・へ?」
「お前、梨江のクッキー食べたら、気絶しちまったんだよ」
う、嘘だろ?あんなに辛いクッキーがこの世に存在するはずがない。
「グスッ・・・・・・ごめんなさい・・・ウグッ」
「まったく、お前も肝っ玉の小さい男だな。あんぐらい、何てことないのに」
「な、泣かないで。俺が悪いんです」
俺のどこが悪いんだよ。可愛い顔してやることは恐ろしいな。

飛行機から降りた俺たちは海沿いを歩いていた。
「先輩、いつもあんなの食べさせられてたんですか」
「まあ、あいつの作るのはいつも辛いからな」
い、いつも?いつか殺されるんじゃないのか?
「梨江ー、そろそろ行かねえとバスに遅れっぞ」
「はあーい」
砂浜で星の砂を集めてた彼女に声をかけると、先輩はいそいそとマップらしきものを鞄から出した。
「えー、ごほん。では、これからここに向かいます。それにはこーやって・・・」

夕暮れ時、俺たちは先輩曰く「超こええ」婆さんの家に着いた。
「あれ、インターホンなかったっけか」
「そんなもんはいらん!」
後ろから怒鳴り声が。
「ば、婆ちゃん!?」
こ、こいつがかよ・・・。確かに怖そうだな。
「こんにちは。お婆ちゃん」
「おお、梨江ちゃんかい。いらっしゃい。充、智香子から聞いてるよ。今日からしっかり働いてもらうからね!で、そこのお前さんは・・・・・・?」
「八代疾風です。駿河先輩とは同じ部活で」
「お前もかい!調理部などやりおって。女をなめるなあっ!」
「ひええっ!」
婆さんは竹ぼうきを俺ら二人にむかって振り回した。
「ぜえ、ぜえ、年かいねぇ。すぐに疲れるようになってしまったわい。自己紹介がまだだったね。私は滝之静佳だよ。さっさとお入り」
やっと入れる・・・こりゃあ俺も疲れるわ・・・。
「すぐに休めるとは思わんように。あんたらにはまず、庭の雑草抜きでもやってもらうかね」
「え、すぐですか?」
「すぐに決まってるじゃないか」
「がんばってね。お兄ちゃんたち」
「お前、少しは手伝おうという気持ちは無いのか?」
「なにをいうか。梨江ちゃんは先月退院したばかり。無理を言うでないよ」
俺たちは夜まで働かされた。



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