ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 願い 〜叶える物と壊す者〜 ( No.7 )
- 日時: 2011/12/25 22:13
- 名前: コーダ ◆ZLWwICzw7g (ID: Jc47MYOM)
一方、プリファーナはハーエルに事細かく事情を聞いていた。
早く根元となる情報を聞きだし、フェーンの時間稼ぎを少しでも長くしないよう懸命に質問をするが、かえってあだとなり何を伝えたいのか分かりにくい状態になっていた。
「ですから、昨日何があったのかを説明するのです!」
「だから!一体どこからどこまで説明すれば良いんだ!?」
「全部ですわ!全部!朝起きるから夜寝るまでの出来事をわたくしに話しなさい!」
お互い焦っているのか、大きな声を出して言い争う。
プリファーナとフェーンの立場が逆なら円滑に話は進みそうだが、クリスタルを破壊できるのはプリファーナしかできない。
それに、彼女を囮役にするのは少々心配なのでこれが1番賢明な状況である。
「朝から夜までの出来事!?ちょっと待ってくれ……」
「早くするのです!」
ハーエルは昨日の出来事を思い出そうとするが、プリファーナが無理に催促するので集中できなかった。
彼女は彼女で、時間稼ぎをするフェーンをチラチラと横目で見ながら尻尾を激しく動かす。
——————よほど、彼のことが心配なのだろう。
「昨日は少し遅く起きたから、行動は昼からだった気がするな……町を歩いて、公園でカップルを睨んで……そこから、気がつくと公園で寝て……これくらいしかないぞ!」
「情報が少なすぎますわ!もう少し具体的に説明しなさい!あの時、なんて言ったかとか!」
せっかく思いだしたのに、酷い言われようだったハーエル。
プリファーナは眉毛を動かしながら、とても苛立っていた。
「なんて言ったかまで言う必要があるのか!?あぁ……昨日は羨ましいとか遅く起きてしまったとか……モテたいなとかしか覚えてない」
「そう!それですわ!」
突然プリファーナは目を輝かせる。先まで苛立っていたのが嘘のようであった。
「それ……?」
「そのモテたいという言葉をどこで言いましたの!?」
「それは……」
ハーエルはとある場所を指さす。
そこは公園に生えている木。彼はその木に背中を預けてあの言葉を言ったのだ。
プリファーナは口から鋭い牙を出して、まるで獲物を狙うかのような目をする。
「それで十分ですわ」
彼女はハーエルの元から離れ、公園の木へ向かって走る。
その際に、腰にある刀を鞘から抜き臨時大戦へ入る。
プリファーナはものの10秒で木の傍へ行き、まずは左手で木を触ってみる。
「これは……」
触った瞬間、彼女の目は限界まで見開く。
普通の木とは違う雰囲気が、プリファーナの身体に流れ込んできたのだ。
「この木自体がクリスタルというのでしょうか……ずいぶん、古いクリスタルですわね……」
今回のクリスタルは木に寄生するタイプで、それはとても古いらしい。
彼女は、瞳を閉じて精神を集中させる——————
「うあぁ——!」
突如、遠くの方から叫び声が聞こえてくる。
プリファーナは黒い翼を大きく動かし、瞳を開けて声がした場所を見つめる。
その瞬間、彼女は恐ろしい物を見てしまった。
「嘘……」
彼女は右手に持っている刀を落として、絶句してしまう。
プリファーナの瞳に映るのは、ウルード族の女性に思いっきり引っ掻かれて血を出すフェーン。
傷口が深いのか、女性は返り血を浴びるほどの出血量。
それを間近で見ていたハーエルは、尻餅をついて怯えた声を出す。
フェーンはその場で仰向けの状態で倒れる。その衝撃で、かけていたメガネも外れてしまった。
ハーエルを取るためなら、どんな邪魔があっても排除する。とても恐ろしい女性の行動力。
もちろん、これはクリスタルによって生まれたこと。女性は本心では行っていない。
——————だからこそ、クリスタルを破壊しなければならない。これ以上、被害を増やさないために。
「………………」
彼女は生唾を1回飲み、右手を自分の右胸に置いて瞳を閉じる。
10秒くらい経ったころには、瞳は完全に開き右手に刀を持っていた。
そして、目の前の大きな木を見つめ、
「フィニッシュですわ」
低い声で言葉を漏らし、木に一閃をする彼女。
刀が1番切れ味をだす斜め45度で斬られた木は、そのまま横に真っ二つになる。
倒れた木が地面につくと、大きな地鳴りが起こる。それを合図に周りに居た女性たちはどこか不思議そうな表情を浮かべる。
どうして自分はここに居るのだろうか、どうして自分は倒れて血を出しているのか——————
クリスタルの影響でいままでの記憶がない彼女たち。だが、これで正気に戻ったところを見るとクリスタルは無事に破壊されたのだ。
プリファーナは刀を鞘に戻し、一刻も早くフェーンの元へ走っていく——————