ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 願い 〜叶える物と壊す者〜 ( No.9 )
- 日時: 2011/12/26 19:03
- 名前: コーダ ◆ZLWwICzw7g (ID: EfshNUBH)
広大な土地。そこで1人ぽつんと桑を持った男が居た。
頭にはふさふさした2つの耳が生えており、さらに1本の尻尾も生えている。
一目見て、ウルード族というのが分かった。
男は持っている桑で、広大な土地の土を耕す。
長年この作業をしているのか、その姿はとても様になっている。
ウルード族は体力、力が他の種族よりズバ抜けてあるので、この広大な土地を1人で耕すことくらい朝飯前である。
だが、知識には乏しいので耕した後が1番苦労する。
——————農薬の量、病気に関しての知識が最たる例だ。
しかし、これは自分が選んだ仕事である。
こんなところで悩んで逃げ出していたら、生きること事態が難しくなる。
育てるというのは、楽な道が一切ない。毎回地道な作業ばかりである。
男はそれを1番理解している。
——————ある事件をきっかけに。
ふと、男の手が止まった。
どうやら、背後に2人ほどの人が居る気配を感じたようである。
1人は日傘をさしていて、紅いドレスを着用したかなり派手なドラーペシュ族。
もう1人は、白狼のウルード族のメイドだった。
男は優しく微笑みながら、2人を見つめる。
一方、メイドは大きな空のダンボールを2つ渡す。
3人は広大の土地のど真ん中で、明るい表情を浮かべていた——————
〜豊作事件簿〜
太陽が昇り始める早朝。外の天気はとてもよく、散歩をするには最適な環境である。
だが、そんな太陽の光を全て遮断している洋館があった。
当然内部は暗く、未だに夜みたいな感覚になる。
——————それを、徐々になくしていく1人の女性が居た。
彼女は、洋館の紅いカーテンをやや乱暴に開けながら歩きまわっていた。
頭の上にはふさふさした2つの耳と1本の尻尾が生えている。この時点で、彼女はウルード族というのが分かる。
白狼を連想させるような髪の毛は、腰くらいまでの長さがある。
前髪は目にかかっていて、瞳は漆黒に輝いている。
黒いメイド服を身にまとい、同じく頭の上には黒いヘッドドレスをつけている。勇ましいウルード族にしては、かなり可愛らしい格好である。
元々、ウルード族にはメイドや執事は適任ではないと言われている。その理由はモラルの低さだ。
言葉使いも男女共に乱暴で、力仕事をやっている方がよっぽど良いと言われている種族。
お客さんが来ても、丁寧な挨拶は一切できずどこか脅しのような感じ。
だから、彼女がメイドをやっているのはとても違和感がある。
「とっとと終わらせて、朝食を作らないとな……」
目を吊り上げながら、一言呟く女性。
尻尾を激しく振りながら、朝食のメニューを考えながらカーテンを開ける。
「——フー、今日はカーテンを開けるのが早いと思いますことよ……」
ふと、背後から声をかけられるメイド。
フーと呼ばれた彼女は体を180度振り向かせ、
「今日はずいぶん遅い起床だな。嬢様」
メイドとは思えない口調を飛ばす。
嬢様と言っているのだから、自分より格上。しかし、口調は明らかに上から目線。
だが、嬢様と呼ばれた女性は全く怒鳴る気配はなかった。
紅い髪は二の腕までの長さまであり、前髪は目にけっこうかかっていて、瞳はルビーを連想させる紅色。
紅いドレスを着用しており、どこかのお嬢様を連想させる格好。
首にはコウモリをモチーフにしたアクセサリーをつけていて、腰には東洋の魂である刀があった。大きさ的に、打刀だ。
背中の大きな黒い翼と黒い尻尾、そして口から見える鋭い牙が生えているところを見ると、彼女はドラーペシュ族だというのが見て分かる。
頭には紅いリボンが2つあり、さらに刀の鞘と黒い尻尾にもつけているところを見ると、かなり可愛らしい一面が見える。
——————洋館の中に居るのに、日傘をさして太陽の光を遮断していた。
「フー、早く朝食を作ってくださいますこと?」
「まだ全てのカーテンを開けていない。確か、キッチンにバウムクーヘンがあったはずだ、それを頬張りながら待っていろ」
嬢様の命令を退け、あくまでカーテンを開ける作業を優先するメイド。
すると、ドラーペシュの女性は大きなあくびを浮かべながらこの場を後にする。
どうやら、キッチンのバウムクーヘンを頬張りに行ったのだろう。
「さて、私も早いところ仕事を終わらせて嬢様の朝食を作らなければ」
2つの耳をピクピク動かしながら、フーはカーテンを開ける作業を再開させる。