ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: A C T † O N ( No.2 )
- 日時: 2011/12/28 23:26
- 名前: StaR-VoiCe (ID: HhjtY6GF)
憂鬱だが、パジャマ姿のまま1階のロビーにある管理人室に行った。
ブザーを鳴らし、管理人を呼ぶ。
「はいよ、何の用か……あ、あぁ、月本さん、どうしたんだ?」
残り少ない白髪を綺麗にオールバックで整えている管理人の石沢は、なぜか緊張していた。
石沢の異様な態度に、幸太も不審さを覚える。
「どうしたんですか?」
「い、いや、なんでもないさ。ほら、合鍵。」
石沢はなぜか慌てながら、部屋の合鍵をくれた。
「あ、ありがとうございます。」
不審に思いながらも鍵を受け取り、エレベーターに乗って再び8階の自室へと向かう。
エレベーターに乗って上に向かっている途中、幸太は思った。
「そう言えば、俺、管理人さんに合鍵のこと……」
「一言も、合鍵なんて言った覚えがない。」
幸太はこの瞬間、脳裏に先ほどの銀髪の男性とラプラスと呼ばれる青年の姿が思い浮かぶ。
あの2人は恐らく、管理人の石沢と接触している。
だから、さっき動揺していたのだ。
パジャマ姿を見ても、特に気にすることはなかった。
「これって、やばいよな?」
エレベーターが8階に着き、開いた瞬間に走り出す。
「やばいやばいやばいやばい!!!!!」
鍵を開けると、大慌てで部屋に向かい、クローゼットから服を取り出す。
危険を感じる。
今まで感じたことがない、違う危険のにおいがする。
幸太はパジャマを脱ぎ棄て、ジーパンとシャツを着て、その上からお気に入りのダウンジャケットを着こむ。
そして、リビングに向かい財布と携帯を……。
「あ、あれ?携帯がない?どこだ?どこだよおい!?」
リビングを見渡すが、携帯が見当たらない。
それどころか、パソコンも無くなっていることに今更気がついた。
「あいつら、パソコンと携帯を……」
幸太はふと、キッチンの脇にある家庭用電話を手に取る。
しかし、電源が入っていない。
「……やられた。」
裏を見ると、コンセントと電話を繋ぐコードが切られていた。
今の幸太に、最早、誰かと連絡を取る手段が断たれた。
「何者だよ……あいつら…………」
携帯にパソコンを盗み、電話の電源を断ち切り、管理人と接触していた。
奴らの行動はまるで、幸太の情報を手に入れ、何かを仕出かそうとしているような動きだ。
「とりあえず、待ち合わせ場所に行くか……」
幸太はリビングの時計を見る。
彼女との待ち合わせまで、約1時間半はある。
「バイクで行けば、20分で着くか。」
幸太は玄関に置いてあるバイクのキーを手に取り、ドアノブに手を伸ばす。
その瞬間だった。
「ここだ。ラプラス、ハイゼンペルク、スタンガン搭載拳銃を構えてろ。」
確実に、玄関の外から聞こえた。
家に侵入してきた、銀髪の男性の声である。
今回は先程と状況が違う、恐らく、いや、絶対に今度は浴槽の中に隠れても見つかってしまう。
しかし、マンション8階で逃げる場所などない。
「……いや、ひとつだけある。」
幸太はドアにチェーンをかけ、大慌てでベランダに向かう。
このマンションには火事が発生した時に、逃げれるように8階だけにベランダに7階に繋がるドアが設置されてある。
ベランダの床に設置された鉄製のドア。
ドアの表面に記載されてあるドアの開け方の説明を見ながら、ドアを開けた。
ドアを開けると、向こうは当前だが、7階のベランダだった。
幸太は躊躇せずに飛び下りると、すぐにベランダの戸を開ける。
どうやら、今ここの住人は不在らしい。
辺りを見渡し、幸太はテレビの横で充電中の携帯電話を見つけた。
「ごめんなさい!!」
謝りながら携帯をとると、すぐに部屋から飛び出した。
恐らく奴らは、もう幸太の自宅に侵入している筈だ。
幸太はエレベーターを使い、一気に1階まで行く。
1階に着くと、そこにはロビーに倒れこむ石沢の姿があった。
「い、石沢さん!!」
幸太は石沢に駆け寄り、仰向けの姿から上向きの体勢に変える。
「うっ…す、すまない……あ、あの銀色の髪の男に………従わないと孫を殺すと……」
「待ってて、救急車呼ぶから!!」
幸太は先程盗んだ携帯を取り出し、大急ぎで救急車を呼ぼうとした。
が、そんな余裕を与えてはくれなかった。
エレベーターが上がり始める。
幸太はそれに気がつくと、エレベーターと石沢を見比べる。
「み、見捨てるわけには……」
あの銀髪の男性に協力していたとはいえ、脅されてやったこと。
石沢に悪意はない。しかし、石沢を助けている間に奴らはやってくる。
「どうかしたんですか?」
外から、上下ジャージ姿で首にタオルを巻いたジョギング帰りの若い女性がやってきた。
「あ、あのすみません。管理人さんが倒れてて、携帯で救急車呼んでもらえますか?」
「わ、分かりました!!」
女性は嫌がることもなく、すぐさま幸太から携帯を受け取って救急車に電話をかけようとする。
しかし、その動作が止まった。
「え、あれ?ウソ……これ、私の、携帯ですよね………どうして……充電してるはずじゃ……」
なんという運のない偶然だ。
幸太は女性の言葉を聞いた瞬間、ロビーから駆けだして駐車場に向かう。
自分のバイクを見つけると、キーを差し込みエンジンをかける。
「本っっっっ当、今日は何なんだよ!!!!」
アクセルを踏み、駐車場から猛スピードで飛び出そうとした。
その瞬間、車の陰から拳銃を構えたラプラスの姿が飛び出してきた。
「とまれ!!」
「停まれるか!!!」
幸太はギリギリのところでラプラスを避け、そのまま彼女との待ち合わせ場所まで走り去った。