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Re: A C T † O N 4話うp ( No.4 )
日時: 2011/12/30 12:46
名前: StaR-VoiCe (ID: HhjtY6GF)

-4-


「要するに、“それ”はあなた方の娯楽と解釈してもよろしいでしょうか?」


時は過去に遡り。

薄暗い会議室の様な部屋。
昼間にも関わらずカーテンを閉め切られ、銀髪の男性は暗闇の向こうに座っている何者かと話していた。
「どう解釈しても構わない。俺はただ命令されただけだ、その娯楽を盛り上げろってな。」
「……相手は、ただの一般人でしょう?」
目を細めながら、どこか悲しげな表情を浮かべながら銀髪の男性は呟くように言う。

「いや、違う。標的は国土交通省大臣の息子だ。」

「………合点しました。で、どうしてあなたが選出されたのです?」
銀髪の男性が尋ねると、暗闇に隠れていた男性が姿を現した。
スーツ姿で長髪を後ろで一本に束ねた、現在の観光庁長官である有川明楽は、笑いながら答える。
「金だよ。この仕事を受ければ6000万。更に成功したら4000万与えると言われた。」
有川は銀髪の男性の肩を優しく叩くと、彼の耳元に口を近づけて言った。


「上の命令は、逆らわない方がいい。」


有川はそのまま、薄暗い会議室を後にした。
呆然と立ち尽くす銀髪の男性は、スーツの裏からスタンガン搭載拳銃を取り出し、見つめる。
「これは、正義……」


                ──────。




「……い…………せん…ぱ………先輩!!!」



ラプラスに大声で話しかけられ、銀髪の男性はハッとする。
「先輩らしくないですよ。どうしたのですか?」
黒ぶち眼鏡を人差し指で掛け直しながら、ラプラスは不安そうな表情を浮かべて尋ねる。
「……何でもない。それより、エントランスにいる2人は?」
「ハイゼンペルクが車で保護してます。行きましょう。」
ラプラスにそう言われ、銀髪の男性はマンションの前に止めてある大型の黒いバンに乗り込む。
後部座席には気絶している石沢と石沢を介護する女性がいた。
「大丈夫ですか?」
「あ、あの…どうして救急車を呼ばないんですか?早くしないと、管理人さんが……」
女性の質問を、目つきが鷹の様に鋭く顎に切り傷があるハイゼンペルクが遮った。
「心配するな、救急車は必要ない。」
ハイゼンペルクは腰からサバイバルナイフを取り出すと、躊躇なく女性の首元を裂いた。

「え……あっ………ぁぁぁ……」

傷口に血の噴水が出来上がり、女性はそのままシートに横たわる。
「ハイゼンペルク、この女性をロビーに置いてこい。月本幸太の指紋が付着したナイフと一緒にな。」
「了解です、ボス。」
銀髪の男性の指示通り、ハイゼンペルクは女性を抱え、マンションのロビーの方へと向かって行った。
未だに気絶している石沢に、銀髪の男性は呼び掛ける。
「起きろ。」
銀髪の男性は石沢の腹部に強烈なパンチを喰らわした。
直後、石沢は呻き声をあげて目を開けた。
「がはっ……あ、あんた!!うわっ、なんだこれ!?」
石沢は起きてすぐに、シートが血が汚れているの気が付いて驚く。
「最後にもう一度チャンスをやる。言うことは聞くよな?」
銀髪の男性はスーツの裏からスタンガン搭載拳銃を取り出し、石沢の頭に銃口を付けて言う。
石沢は恐怖で震えあがり、頷くことしかできなかった。
「よし、ラプラス。ハイゼンペルクが来たら次の場所へ行け。」


   *****


バイクを飛ばして20分。


幸太は彼女との待ち合わせ場所である、赤坂に建つホテルニューオータニの駐車場にいた。
荒れた息を整え、大きく深呼吸をする。
現在の時刻は9時過ぎ、約束の10時までは30分は余っている。
「石沢さん、大丈夫かな……」
本当なら人の心配をしている場合ではないが、目の前で死にかけている人を見て、ほっとくわけにはいかない。
しかし、今更どうしようもない。
あの女性が救急車を呼んでくれたことを願うばかりだ。
幸太は腕時計を見ると、辺りを見渡す。
「くそっ、こんなときにお腹が減るとは……」
まともに朝食を食べることができなかった幸太は、とりあえずホテルの中にあるレストランで朝食を摂ることにした。
平日の朝なので、ホテルの中はガランとしている。
無論、レストランにいる客も疎らだ。
幸太はサラダ、珈琲、その他様々な料理をお盆の上に乗せ、テレビの設置されてあるテーブルの前に座った。

「おはようございます。」

テーブルの傍にあるソファーで朝刊を読んでいた老人が、幸太に挨拶をした。
服装はジャージ姿であり、銀縁めがねとスキンヘッドがよく似合っている老人だ。
「おはようございます。」
「いやぁ〜、冬の朝は寒いですね。ジョギングしてたら喉痛くなってね。」
老人は一人笑いながら、ポケットからのど飴を取り出して幸太に差し出す。
「一個あげるよ、もう必要ないからね。」
「あ、ありがとうございます。」
幸太は老人からのど飴を受け取り、お礼を言う。
「それじゃあ、私は。」
老人は軽く会釈をして、そのままエレベーターの方へ向かって行った。
幸太はテーブルの上にあるリモコンを手に取り、ニュース番組へと切り替える。
熱々の珈琲を啜りながら、サラダを頬張る。

『今人気のアイドルグループ“JJ6”のシングルCDが1日で40万枚売れたという快挙に、リーダーの志村雪那さんから喜びのコメントを頂きました。志村さんはメンバー全員で今回の……あ、ここで速報が入りました。お伝えします。』

速報という言葉に、幸太のサラダを食べる手が止まる。
「まさか……そんなことは………」




『つい先ほどの9時過ぎ頃、新宿区のマンションのロビーで女性の遺体が発見されました。遺体は首を切られて大量出血による失血死であり、遺体の傍に落ちていた携帯から、容疑者も特定されています。容疑者は現場マンションに住む都内の大学1年生の月本幸太、18歳。容疑者はすでに自宅におらず、警察は殺人容疑と見て、犯人の行方を追っています。』