ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 奇々怪々な御噺 ( No.8 )
- 日時: 2012/01/31 18:51
- 名前: *里奈*. ◆T4kE1oY42E (ID: v1PUoFnc)
第一之幕
二ノ噺
キーンコーンカーンコーン、と、授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
普通の学校は、この後にクラブ、または部活をしに行くが、奇怪学校にはそんなものは存在しない。
得意な事や好きな事は人それぞれで、全校生徒の数も普通の学校よりも少ない。
なので、奇怪学校の生徒は、授業が終わるとすぐ家へ帰る。
後は帰るだけなので、生徒達は帰りの準備をしていた。黒もその準備をしていた。
準備が終わると、帰りの会が始まり先生の話が始まる。
先生の話は大体長い。そう確信していた黒は、先生にそっぽを向く替わりに窓側の方へ目を向ける。
「皆さん、明日も元気に学校に来ましょうね」
そんな当たり前のような事を言い、帰りの会は終わって皆が帰って行く。
黒はまだ準備が出来ていなかったので準備をしていた。
準備が終わり肩に鞄を掛け教室を出ると、誰も居なかった。
皆もう先に帰ったのか、と考えると、靴を丁寧に履き校舎から出た。
門を出て帰るのかと思うと、校舎の裏側へ行った。
辺りを見回し、そっと素手で壁に触れた。ぶつぶつと何か呟きながら、手を当てて前へ歩いて行く。
「…………!」
すると、後ろから足音が聞こえた。バッと後ろを振り向く。しかし誰も居ない。
再び顔を前に向ける。
「何してるの」
「!」
聞き覚えのある声。振り向くとやはり魅蓮だった。
「ここから先は、立ち入り禁止、なんだけどな」
「だから入るなって?」
「そう。忠告だよ、忠告」
「すぐ終わるよ。てか君、まだ帰っていなかったの?」
「先生とお話、してたからね」
「あぁ、そう」
いつものように冷たく反応を返すと、何故か手を掴まれた。正確に言えば手首だが。
黒は振り払おうとしたが、強く握られている為に振り払えなかった。
「放して」
「嫌だ。忠告しても聞いてくれないし。この先、行ったら危険、なんだよ」
「何が……」
何が危険なんだよ、そう言おうとした刹那、暴風が彼らの間を吹いて行き通り過ぎた。
それと同時に、魅蓮によって握られていた手首がするっと放された。
何かあったのか、魅蓮に聞こうとしたら、彼女はその場で片腕を押さえて地べたに座り込んでいた。
見れば、その腕と片足から血が出ていた。
何かに切られたような切り傷があり、そこはぱっくりと開いていた感じだった。
その様子に少し目を見開いた黒は、肩に掛けてある鞄をその場に落とした。
「は? 何でそうなってるの? 意味分かんない」
「ハァ…ハァ……わ、たしの方、が…知りた、いな…」
「ふーん、………か」
「? …何、言っ…」
「君はここで待っててもらえる? あれが何処に行ったか見てくるからさ」
「私、も…」
「その怪我じゃ動く事は無理だよ。そこで休憩してれば?」
じゃあね、と一言言うと、あの風が吹いて行った方向へと軽い足取りで走って行った。
*****
少し小さい体育館。その前にある大きなグラウンド。その周りにはトラックも引かれてあった。
黒はそのトラックの中に居た。そして、何かを見つめていた。
その何かは、彼の5mほど前で小さく風を巻き起こしていた。
「さっきの奴、君でしょ」
風は何も答えない。
「ねぇ、答えなよ。ついでに正体も明かしてよ」
突然風は大きくなり、つむじ風となって黒に襲いかかる。しかし、彼は避けずにその場に立ち続けていた。
当然風を身で受けた。髪や服が風になびいていくだけで、彼自身には頬に小さな切り傷ができただけだった。
「へえ、そういうことか」
何か分かると次の瞬間、彼はつむじ風の中に片手を突っ込み、何かを掴んだ。
それを力強く絞めると、何かは息苦しいような鳴き声で怪異な悲鳴をあげた。
そんな事も気にせず、感情がない目で見つめながら何かを絞殺しようとする黒。
暫くすると、怪異な悲鳴は聞こえなくなった。
と同時に、つむじ風は次第に弱まっていき、最後には無くなっていった。
黒は自分の手に何か付いていると気づき手を見ると、砂のような物が手にあった。
そして、手に付いた砂を両手でパンパンという音を出しながら払った。
「フゥ…こんなものかな」
そう言うと、自分の頬の血を拭い、その血の付いた指を軽く舐めた。
このまま帰ろうかと思ったが、向こうに鞄を落としてしまったなと気づくと、また校舎の裏側へと歩いて行った。