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Re: 吸血鬼と暁月 ( No.1 )
日時: 2012/01/10 15:14
名前: 枝垂桜 (ID: so77plvG)

 第一章 迷子 

 貴方は誰?
 私はもう一人の貴方。
 どういう意味ですか?
 私はずっと、平安の世から貴方が目覚めるのを待っている
 え?
 貴方の目覚めのときは近い。いくら足掻こうと、あの人はもう待てないわね、きっと。
 あの人?──様のことですか?…あっ!待って!もう少し話を!まっ…
 

 日ノ本 1561年 美濃(岐阜)

「そろそろ起きて、朱音アカネ
紗雨サウ…?」
「今日は目覚めが悪そうだね。何か嫌な夢でも見た?」
「いえ…。なんでもないです」
「ごめんね。起きたばかりで悪いけど、もう城に行かなくてはいけないんだ」
「いいえ。大丈夫ですよ。龍興様や半兵衛殿に迷惑はかけられませんものね」
「すまんな」
「神社はわたくしにお任せください。食事は済ませたのですか?」
「あ、ああ…。木の実を食べた。では行ってくるよ」
「行ってらっしゃいませ」

 沙雨は朱音に見送られて家を出た。

 朱音は布団から出ると寝巻の小袖を整え、新しい小袖に腕を通した。
 そのあと台所行くと、昨日と全く変わっていなく、すぐに沙雨は何も食べていないことが分かった。

 沙雨は朱音の恋人兼兄妹であった。
 しかし、朱音には幼き頃の記憶が全くなく、目覚めると沙雨いて「自分は君の兄だ」と言った。
 それだとしても、朱音には沙雨は本当の兄なのか今だよく分からない。
 沙雨はこの美濃でも有名な美貌の持ち主。
 しかも、勉学が優れ、戦術も優れ、戦略をすばやく考え付く賢い脳を持ち合わせており、斎藤龍興や龍興に仕える天才軍師、竹中半兵衛と共に軍師の仕事をしている。

 それに比べて、朱音は美貌を持つものの、沙雨とは全く似ていなく、勉学は分からなく、運動も得意ではない。

 世間には兄弟ではなく、恋人同士で知れているため怪しまれることはないが、朱音自身は疑問を抱いていた。
 
 兄弟婚も許されない事であり、本当の妹なのかでさえ疑問を抱くが、朱音が沙雨を思う気持ちは変わらなかった。