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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 吸血鬼と暁月 ( No.7 )
- 日時: 2012/06/24 17:21
- 名前: 枝垂桜 (ID: gZQUfduA)
「沙雨────ッッッ!!」
沙雨が朱音の首筋から顔を離すと、朱音は崩れるように沙雨の腕の中へ倒れこんだ。
沙雨の唇の周りの色は──紅蓮。
朱音の紅い血が沙雨の唇についていた。
半兵衛は沙雨の元まで走ると、その襟を乱暴に掴み上げた。
「沙雨……、お前は分かっているのかッ。お前は朱音ちゃんをまた──」
「堕とした……、でしょう、半兵衛殿」
沙雨の瞳は先ほどとは打って変わって、朱音の血のごとく真っ赤な紅蓮に染まっていた。
口元には怪しげな細い微笑みを浮かべ、半兵衛の燃えあがる怒りの感情さえも一瞬で消してしまいそうな雰囲気を背負っていた。
「本当は……貴方もこの血を自分の血に取り入れたいのではないですか?」
「──俺はもうそんな欲望は捨てた。俺はもう人間なんだ」
「また馬鹿なことを。化け物が人間になれるとでも思っていらしてるんですか?それなら僕だって──とっくにやってますよ」
低い声はさらにトーンを落としていき、相手に恐怖すら覚えさせる。
「朱音ちゃんをつれてどうするんだい?」
「この地から去ります。僕の故郷に帰りますよ。……大人しくね」
沙雨は半兵衛の手を振り払って朱音を抱き上げる。
「朱音ちゃんの意思は関係ないのか?」
「朱音は……きっと僕を信じてくれる。いや、信じてくれないと困る」
「沙雨……」
「しゃべりすぎたようだ。僕はもう行く。血が恋しくなったら戻ってくことだね」
沙雨はそう言い残して、闇に溶けて行った。
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