ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 吸血鬼と暁月【完】 ( No.110 )
- 日時: 2012/11/30 12:14
- 名前: 枝垂桜 (ID: DMJX5uWW)
マーチのその言葉に、朱璃はギリッと置く場を噛み締めた。
───一番言われたくない台詞だ。
「……なんでそうやって、皆、ここを出ると俺は必ず死ぬと前提するんだ?」
「そういう意味ではありません。最悪の事態を、私たちは引き起こしたくないのです」
「俺は子供じゃない」
「いいえ子供です。私共に比べればまるで赤子のようです」
いくら朱璃が訴えても、マーチは引き下がらない。しかし朱璃も、今までのように簡単に引き下がるわけにはいかない。
自分はもう子供ではない。それを証明する為に。
朱璃が血桜を握ると、マーチは己の大鎌を握った。空気がぴりっ、と張りつめ、そして朱璃が地を蹴──、
「おやめ」
張りつめた静寂を一瞬にして破ったのは、朱璃の父親であり、マーチの主である沙雨だった。
いつもの微笑みを完全に消し去り、三人を冷え切った青い目で捕えてい。
「父さん……」
「………敵同士ではないのに、お互いの血を流し合う事もあるまいさ」
「でも」
「朱璃───お黙り」
何百年も前、朱音をこうやって静かにさせていた時のように、朱璃にも同じことをする。
『───あらら〜。面白くなーい』
朱璃のすぐ隣で突如透明度が下がり、一人の少女が姿を現す。
黒を主にし、赤のラインが所々に入ったゴシック・ロリータに身を包んでいる。頭には黒のヘッドドレスをかぶり、真っ赤な目を細めてピンク色の唇を引き上げながら、宙に浮かんで微笑んでいた。
沙雨はそれを見て、更に不機嫌になる。
「……」
『どうせいつかは殺りあう中でしょ? 今殺しておけば、その手間も省けると思うけどなぁ〜。ね、朱璃』
「イヴ、うるさい」
『せっかく面白くなってきたから出てきたのに〜。イヴ、つまんなーい』
朱璃の契約者であるイヴ。幼い外見をしながらも、悪魔界の王に仕える執事長の秘書である。
「朱璃もやっかいなのと契約したね」
沙雨はなんの溜息なのか分からない息を吐く。