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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 吸血鬼と暁月【楽園の華 オリキャラ募集中】 ( No.119 )
- 日時: 2013/01/01 15:11
- 名前: 枝垂桜 (ID: a4Z8mItP)
「そうだね……」
朱璃も自分の胸に刻まれた薔薇の刻印の形を思い出しながら、頷いた。
そっくりというか、本来はこの黒薔薇をモチーフに、自分の刻印の模様が決まったのだろうから、薔薇に似ているのは当たり前だろう。
+ + +
特に興味を惹かれるものは、ここにはなかった。ただ、大きな本棚に収められている大量の本は、少なからず朱璃も興味を惹かれた。
しかしそれをいざ開いてみると、自分には読めない古代文字で記されていて、思わずため息をついてしまった。むしろ、何故に昔の人はこんな絵のような文字が読めるのか、不思議でならない。
『あまり、手がかりになるようなものはないわね』
「そうだね……」
『ちょっと残念がっているかしら?』
「ちょっとどころじゃなくて、残念だよ。だけど、これで終わったわけではないから、へこんでられない」
『そうね。───それにししても、朱璃は強情だわ。悪魔である私に、〝主としての願い〟として、「自分の母である朱音を見つけて欲しい」って頼めばいいのに』
イヴがクスクス笑いながら言うと、朱璃はその傍らで静かに首を振った。
「君に見つけてもらったら、意味がないんだ。僕が、自分で見つけなきゃ」
『……そうね。じゃあ、その理由も、いつか聞かせてもらおうかしら、我が主』
「いいよ。いつか。機会があったらね」
『それでいいわよ。無理強いはしないわ。貴方はそのうち、私を欲する時が来る。必ず……。ふふ』
イヴは怪しく、また美しく微笑んだ。その笑いは、朱璃にとって、あまり快いものではなかった。
そして、
すっかり夜が老けた頃に、朱璃はベットの中に入って目を閉じた。
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