ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 吸血鬼と暁月【楽園の華 オリキャラ募集中】 ( No.121 )
- 日時: 2013/01/06 21:38
- 名前: 枝垂桜 (ID: a4Z8mItP)
台詞オンリーにつき注意!
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「あらぁ? なんか、動き出したみたいじゃない?」
『そうだな』
「やっとねえ……。数十年待ったわぁ」
『どうする。捕まえたいなら、俺が捕まえてくる』
「お待ちなさい? かの幽霊界の王、ファウスト・ブラッドも動いているのよぉ。こちらが派手に動けば見つかるわぁ。それにあっちし、精霊も呼び出したみたいだしねぇ」
『ではどうする』
「紅茶はまず香りを楽しむものよぉ。沙雨や朱璃が探している〝彼女〟の香りを、少しだけ撒いておいて頂戴?」
『御意』
「ふふふ。貴方も罪な女ねぇ。
────時期吸血鬼の王の妻……朱音? 貴方の子……王子も探しているみたいよぉ? うふふ。楽しくなってきた。
あは。アハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ」
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「ねぇ沙雨。この子の名前、どうしようか」
「朱音が決めて。君が産んだ子だ」
「ううん。私が産んだけど、私の子じゃない。沙雨と私の大事な大事な宝物」
「そうか。………名前……。朱音、一ついいかい?」
「ん?」
「『璃』という字は入れたい。この子も目が青い。僕の狂った遺伝子を引き継いでしまったんだ。
僕はこの青い瞳が嫌いだったのに、朱音のおかげでこんなにも好きになれた。だから、この子も同じ色なら、好きになれるように、瑠璃の『璃』をいれたい」
「瑠璃じゃだめなの?」
「だめ」
「変なの。じゃあ、青なら赤を入れない?
沙雨の青と私の朱。見ただけで、この子は私たちの子供ですって分かるように!」
「いいよ。じゃあ、『璃』に『朱』……」
「───『朱璃』」
「『朱璃』か。……良い名前だね」
「うん」
「青の冷静さと、朱の情熱を持ち、自分が持つ二つの色に誇りを持って育って欲しいね」
「そうだね」
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沙雨side
「うぅー……っ。ひくっ、ううう……」
あの日、朱璃が泣きながら神社に帰って来た。
僕は朱璃の鳴き声が聞こえた瞬間、慌てて朱璃に駆け寄った。その時はまだ、王宮に仕えていなかったから、暇を持てあまして、庭掃除をしていたのだ。
「朱璃っ。どうしたの? こんなに汚れて」
目線を合わせるため、しゃがみ込んで着物を手で払う。所々落ち葉が付いていたりしていた。
「おとーさぁん……っ」
朱璃を抱きしめて、「よしよし」とあやす。
しばらくして、朱璃が少し落ち着いてから話しかけた。
「転んだの?」
そこまで言ってやっと朱音の存在がない事に気が付く。
「朱璃、お母さんは?」
「おかーさんね……っ、おかーさんね……っ。朱璃のせいでねっ……消えちゃったの……っ」
「〝消えた〟?」
ひくっとしゃくりあげながら話す朱璃。
朱音が消えた?
それはどういうことだ? まさか彼女が、子を捨てるわけがあるまい。絶対にそれはない。
しかもなぜ「朱璃のせい」?
「朱璃が……っ朱璃が……っ、おかーさんと、追いかけっこして、遊んだから。おかーさんのこと、おいてったから、おかーさん、いなくなっちゃ、……っ、うぅー」
これは何か別の者が絡んでいる。
『いなくなった』のではない、『連れ去られたのだ』。この時点で、僕はそう確信していた。
「大丈夫。朱璃のせいじゃないよ。朱璃のせいじゃない」
「おとーさん……っ、ここ、痛い……っ」
朱璃が胸元の着物を指さす。そこをめくってみると、黒薔薇の刻印がそこに刻まれていた。
ここ数百年間、感じる事のなかった怒りの感情が蘇る。
殺してやりたい。そう思った。今すぐ、この手で。
「おとーさん。朱璃、バチが当たったのかな? おかーさんを置いて行ったから、神様が怒って、おかーさんのこと、連れて行っちゃったのかな……っ?
朱璃がもっと良い子になれば、おかーさんは戻ってくるのかな……っ?」
朱璃をもう一度、強く抱きしめた。
「朱璃、違うよ。朱璃はもう良い子だよ。朱璃はそのままでいい。
今の朱璃が悪い子だと神様が思って、お母さんを連れて行ったんだったら────お父さんは、神様を許さない」
絶対に。神だろうと。悪魔だろうと。
「だから、朱璃、泣かないで……」
朱璃がいなくなった次の日、この夢を見た。