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Re: 吸血鬼と暁月【100越え感謝】【オリキャラ募集中!】 ( No.14 )
日時: 2012/07/19 08:05
名前: 枝垂桜 (ID: gZQUfduA)

 夜になって、朱音が寝静まったころだった。

 朱音が眠るベットに月がさして、ほんの少し明るくなる。

 そこにぶわっ、と人の形をした影が突然浮かび上がり、その影があろうことか、くっ、と喉を鳴らして笑った。


『失態ですね。彼に僕の存在を気付かれてしまうなんて……。情けなくて、どうにかなりそうですよ』


 ゆらり、と腰の方で九本の大きい影が揺れる。

 
『必ず、貴方のことはこの手で僕が守ります───朱音さん』


「───消えて」


 ───カッ!


 まっすぐに飛んできた腰刀が陰に直撃する。


 いつの間にかそこに立っていた沙雨が、たった一言告げて刀を投げたのだ。


 それでも影はまたくつくつと笑う。


「ありがとう───時雨、良い子だね」


「こ、子供扱いしないでッ。馬鹿ッ」


 沙雨は後ろにいるスノーブルーの髪をもった少女の頭に軽く手を置いた。


 少女はそんな素っ気ないことを言いつつも、頬をピンク色に染め、手を振り払おうと頭を左右に振る。

 長いロングと、雫のペンダントも共に揺れ、月の光に映える。


 時雨と呼ばれた少女の名は、如月 時雨。魔女と雪女のハーフであり、沙雨と親しい様子だ。かなり幼く見えはするが、沙雨と同い年である。


「あ、アンタッ! 早く朱音から出て行ってよッ!私も朱音とお話したいのにッッ」


『───〝爆〟』


 喚く時雨を横目に見て、静かに一言唱えた。

 立てた右手の人差指と中指の周りと時雨の真後ろに、五芒星が浮かび上がり、次の瞬間、パンっと破裂する。


 しかし時雨の体は沙雨によって助けられていた。

 沙雨は影をキッ、と睨みつける。


「時雨にまで手を出さないでくれないか、九尾狐」


『あやや、もしかしてばれちゃいました?』


 苦笑いしたような声を出す。


 すると突然、陰から人が現れた。


 否───人、というより狐の妖怪、と言った方が近い。

 銀髪の短い髪に、狐の耳が髪から覗いている。

 澄んだ青の瞳に、青く、高価そうな和服で身を包んでいる。

 九本の美しい毛並みの尻尾が腰から生えており、。真っ青な紫陽花柄の傘を手に、微笑んでいた。


「僕は九尾狐の大神 天孤。天候を操る神・・・と、天照様から命じられてます」


「えっ、神様?」


 その自己紹介に、時雨はすっとんきょうな声を出した。



「なるほど。神として、そして朱音の守護者として、ずっと彼女を守ってきたんだね」


「僕の仕事は、貴方方から朱音さんを守ることですよ」


「残念だな。彼女は僕のものだ」


 時雨は二人の間に、亀裂が入った気がした。